大塚製薬株式会社
フェニルケトン尿症(PKU)治療薬候補化合物「repinatrabit」
青年期PKU患者に対する有効性を示唆する長期非盲検延長試験のデータを米国臨床遺伝学会議(ACMG)年次総会にて発表
- 「repinatrabit(開発コード:JNT-517)」は、大塚製薬が開発中の経口低分子化合物であり、米国食品医薬品局(FDA)から、フェニルケトン尿症(PKU)の治療薬候補化合物として、オーファンドラッグ指定および小児希少疾患医薬品指定を取得している
- 長期非盲検延長試験において、本剤1日2回低用量(75mg)を投与された青年期患者は、継続投与開始1ヵ月時点で血中フェニルアラニン濃度の低下が確認された(ベースラインから平均 67%の減少)
- 現在、成人PKU患者を対象に日本を含めたグローバルフェーズ3(PheORD)試験が進行中
大塚製薬株式会社(本社:東京都、代表取締役社長:井上 眞、以下「大塚製薬」)および米国子会社のOtsuka Pharmaceutical Development & Commercialization, Inc.(所在地:米国ニュージャージー州・プリンストン、以下「OPDC」)は、3月12日(米国時間)、2026年米国臨床遺伝学会議(ACMG:American College of Medical Genetics and Genomics meeting)年次総会において、フェニルケトン尿症(PKU)の治療薬候補化合物である「repinatrabit(開発コード:JNT-517)」に関する新たな長期非盲検延長試験(OLE:Open‑Label Extension)データを発表しました。本データでは、PKUの青年期患者(12-17歳)において、血中フェニルアラニン(Phe)濃度がベースラインから平均 67%の減少が確認されました。また、本学会では、成人を対象としたグローバルフェーズ3(PheORD)試験(NCT06971731)の試験デザインについても発表しています1。
OPDCの上級副社長兼医学責任者John Krausは、「これらのデータは、PKUの理解と治療の進展に向けた当社の取り組みにおける重要なマイルストーンです。血中Phe濃度の適切な管理を維持することは、青年期患者さんにとって依然として大きな課題であり、高濃度のPheは実行機能障害をはじめとするさまざまな認知機能障害を引き起こす可能性があります。repinatrabitはPhe濃度を低下させることで、PKU患者さんにおける治療選択肢を拡大する可能性を有しています」と述べています。
PKU はPheの体内蓄積を特徴とし、それにより脳の発達と機能に悪影響が及ぶ可能性があります。血中 Phe 濃度の適切な管理・維持は、PKU 患者さんにとって極めて重要な課題であり、とりわけ青年期には食事管理が小児期よりも困難になることから、神経発達が著しいこの時期に高い Phe 濃度が認知機能の低下や精神疾患の合併を引き起こす可能性があるため、その重要性が一層高まります。
本試験において、本化合物75 mg を1日2回投与された青年期患者は、OLEにおいて最初に評価可能となる時点(投与開始56日目/OLE開始1ヵ月目)で持続的な Phe 低下を示し、ベースラインから平均67%のPhe濃度減少を示しました。なお、青年期患者対象としたフェーズ2試験は引き続き盲検化が維持されているため、今回の青年期患者のOLE試験参加前のデータは公開していません。無作為化期間における初期治療データについては、今後発表する予定です。青年期患者で観察されたPhe低下およびその一貫性は、成人を対象としたフェーズ2試験で報告された結果と同様の傾向を示しており、本化合物が幅広い年齢層において高い治療可能性を有することを示唆しています。repinatrabitは良好な忍容性を示し、その安全性プロファイルは成人を対象としたフェーズ2試験の結果と一致していました。新たな有害事象は認められず、重篤な有害事象も報告されていません。
これらの結果を支持する形で、大塚製薬は成人PKU患者を対象とし日本を含めたグローバルフェーズ3(PheORD)試験を現在実施しています。本試験は、repinatrabitの2つの経口投与群(75 mgまたは150 mgを1日2回)とプラセボを比較し、有効性および安全性を評価する無作為化二重盲検プラセボ対照試験です。第1治療期間では、約120名の患者が1:1:1の比率で、2つのrepinatrabit群またはプラセボ群に無作為に割り付けられ、6週間の投与を受けます。主要評価項目は、第2週、第4週および第6週における血中Phe濃度の短期平均減少率です。続く第2治療期間では、当初repinatrabit群に割り付けられた参加者は同用量でさらに46週間の投与を継続し、プラセボ群の参加者はrepinatrabit 150 mgを1日2回投与へ移行します。全参加者を対象として、合計52週間にわたる安全性および有効性の追跡調査が実施されます。
本試験は、疾患の重症度や過去の治療経験にかかわらず、幅広い成人PKU患者を登録することで、実臨床を反映した評価を目指しています。主要評価項目の達成は2026年末に予定されており、試験全体は2028年に完了する見込みです。
repinatrabitについて
repinatrabit(JNT-517)は、フェニルアラニン輸送体SLC6A19を標的とする選択的低分子阻害剤であり、年齢や遺伝子型を問わず、すべてのPKU患者を対象とした経口治療薬として初のクラスとなる可能性を有しています。本化合物は、新規に同定された潜在的アロステリック部位に作用し、腎臓におけるフェニルアラニンの再吸収を阻害することで血中Phe濃度を低下させる新たな治療アプローチを提供します。repinatrabitは、2024年9月に大塚製薬の完全子会社となったJnana Therapeutics社によって創製された独自の革新的な創薬基盤であるRAPIDプラットフォームを用いて開発された化合物です。また、repinatrabitはPKUの治療薬として、米国食品医薬品局(FDA)より希少疾病用医薬品指定および小児希少疾病指定を取得しています。
フェニルケトン尿症について
フェニルケトン尿症(Phenylketonuria:PKU)は、常染色体劣性遺伝形式を示す遺伝性疾患です。先天性のアミノ酸代謝異常症で、フェニルアラニン代謝に関与する遺伝子(代表例としてPAH遺伝子)に病的変異が生じることでフェニルアラニンという必須アミノ酸をチロシンに変換する酵素(フェニルアラニン水酸化酵素:PAH)の働きが生まれつき弱い、または補酵素(テトラヒドロビオプテリン:BH4)の生合成に関わる酵素に異常があるために発症します。この結果、血液中にフェニルアラニンが蓄積し、脳の発達や機能に悪影響を及ぼす疾患です。発生頻度は世界で年間約24,000人に1人、米国では約10,000人に1人と推定されています2。食事中のタンパク質を制限してフェニルアラニン摂取を抑え、不足するタンパク質やビタミン、ミネラルを治療用ミルクで補う食事療法や、PAHやBH4を補う薬物療法が行われています。しかし、これらの治療を行っても血中フェニルアラニン濃度を十分に管理できない場合があり、PKUに対するより有効な治療法の確立が望まれています3。
大塚製薬株式会社について
大塚製薬は、一人ひとりの可能性に向き合うトータルヘルスケアカンパニーです。"Otsuka-people creating new products for better health worldwide"の企業理念のもと、未充足の医療ニーズに新たな価値を提供する医療関連事業と、科学的根拠をもった独創的な製品やサービスにより日々の健康維持・増進をサポートするニュートラシューティカルズ関連事業を通じて、人々のウェルビーイングの実現に向けて取り組んでいます。 詳細はコーポレートサイトwww.otsuka.co.jp をご覧ください。
- 1.Otsuka Pharmaceutical Development & Commercialization, Inc. "A Study to Evaluate the Safety and Efficacy of JNT-517 in Participants With Phenylketonuria (PKU)." Clinicaltrials.Gov, clinicaltrials.gov/study/NCT06971731.
- 2.Rocha JC, MacDonald A. Dietary intervention in the management of phenylketonuria: current perspectives. Pediatric Health Med Ther. 2016 Dec 1;7:155-163. doi: 10.2147/PHMT.S49329. PMID: 29388626; PMCID: PMC5683291
- 3.Hillert A, Anikster Y, Belanger-Quintana A, Burlina A, Burton BK, Carducci C, Chiesa AE, Christodoulou J, Đorđević M, Desviat LR, Eliyahu A, Evers RAF, Fajkusova L, Feillet F, Bonfim-Freitas PE, Giżewska M, Gundorova P, Karall D, Kneller K, Kutsev SI, Leuzzi V, Levy HL, Lichter-Konecki U, Muntau AC, Namour F, Oltarzewski M, Paras A, Perez B, Polak E, Polyakov AV, Porta F, Rohrbach M, Scholl-Bürgi S, Spécola N, Stojiljković M, Shen N, Santana-da Silva LC, Skouma A, van Spronsen F, Stoppioni V, Thöny B, Trefz FK, Vockley J, Yu Y, Zschocke J, Hoffmann GF, Garbade SF, Blau N. The Genetic Landscape and Epidemiology of Phenylketonuria. Am J Hum Genet. 2020 Aug 6;107(2):234-250. doi: 10.1016/j.ajhg.2020.06.006. Epub 2020 Jul 14. PMID: 32668217; PMCID: PMC7413859.