パーキンソン病

どんな治療をするの?

  • パーキンソン病の診断がついた時から、多くの場合はお薬による治療が開始されます。
  • 治療薬は病状に合わせて変更します。
  • 薬の量や種類が増えたからと言って心配する必要はありません。
  • 薬の量や種類は病状に合わせて担当医が診察をしたり、患者さんに様子をうかがって決まります。
  • 治療がうまくいく様に、主治医に困っていることをお話ししてください。

お薬による治療

パーキンソン病で使われる主な薬剤一覧

L-ドパ エルドパ、レボドパなどと呼ばれ、パーキンソン病治療の柱となる飲み薬です。脳内でドパミンに変化して、不足しているドパミンを補充する薬です。
ドパミン受容体作動薬 脳内でドパミンを受け取る側(受容体)に刺激を与えて、ドパミンが出たのと同じ状態にする薬です。効果が長く持続するのが特徴です。日本のガイドラインでは、70歳未満で認知症を発症していない場合、特に症状の早期改善が必要ない場合にはドパミン受容体作動薬から開始する治療法が推奨されています。飲み薬の他に24時間効果が持続する貼り薬もあります。
MAO-B 阻害薬 マオビー阻害薬と呼ばれ、ドパミンの効き目を長くする役割を果たします。
COMT阻害薬 コムト阻害薬と呼ばれ、L-ドパが効率よく脳に届くようにします。
アデノシン
受容体拮抗薬
アデノシンはドパミンとバランスをとって作用している神経伝達物質の一つです。パーキンソン病ではドパミンの作用が弱くなるため、相対的にアデノシンの作用が強くなり、神経のバランスが崩れ、さまざまな症状が出てきます。
アデノシン受容体拮抗薬は、アデノシンとドパミンのバランスを調整して、症状を改善します。
抗コリン薬 ドパミンと同じ神経伝達物質にアセチルコリンがあります。ドパミンとアセチルコリンはうまくバランスを取りながら脳内で働いていますが、パーキンソン病ではこのバランスが崩れ、さまざまな症状が出てきます。抗コリン薬は、アセチルコリンとドパミンのバランスを保ちます。
ドパミン放出促進薬 ドパミンを出す神経細胞を刺激して、ドパミンが出るのを促す薬です。使用されずに残ったドパミンを回収して再利用できるようにする働きもあります。
L-ドパ賦活薬 体内でドパミンが作られるのを促進したり、ドパミンの効果をなくしてしまう成分を排除することにより、脳内のドパミンを増やします。
ノルアドレナリン
補充薬
ノルアドレナリンは、ドパミンと同じ神経伝達物質で、ノルアドレナリンの不足によっても、パーキンソン病の症状が出やすくなるため、ノルアドレナリンを補充するために使われます。

パーキンソン病治療中の注意事項

お薬を飲み始めた時にみられる副作用

パーキンソン病のお薬を飲み始めた時に起こりやすい副作用です。このような症状があらわれた場合には、主治医へ連絡してください。

  • 胃腸の症状
    吐き気や食欲不振、便秘などの症状があらわれることがあります。症状によって、吐き気止めや便秘薬での対処が可能です。
  • 眠気
    お薬によって眠気が出たり、突然寝てしまう副作用があります。
  • 立ちくらみ
    立ちくらみが副作用としてあらわれることがあります。立ち上がるときには、ゆっくり立ち上がることを心がけましょう。症状が強い場合には、立ちくらみを防ぐお薬での対処が可能です。

長期間お薬を飲み続けた時にみられやすい副作用

パーキンソン病のお薬を長期間継続していると、特有の副作用がでることがあります。このような症状があらわれた場合には、主治医へ連絡してください。

  • 幻覚
    パーキンソン病では病気やお薬によって幻覚を見ることがあります。お薬の種類を変更したり、量を減らしたりすることで治まります
  • むくみ
    足にむくみが出ることがあります。お薬の種類を変更するなどの対処をします
  • ドパミン調節異常症候群
    お薬の副作用で、衝動的な買い物をしたり、ギャンブルに依存したり、性行動が抑えられなくなるなどの症状がでてくることがあります。お薬の量や種類を変更することで症状を抑えられる場合もあります。
    このような様子があらわれた時には、恥ずかしがらずに主治医に相談しましょう。
  • お薬を飲み始めた時にもみられます

お薬を飲んでいても注意すべき症状

  • ウェアリング・オフ現象
    パーキンソン病治療の柱となるお薬であるL-ドパが効いている時間が短くなる現象で、1日の中で症状がよくなる時間帯や悪くなる時間帯が出てきます。
    L-ドパの量や飲む回数を調整する、または他のお薬を追加するとウェアリング・オフ現象が改善することがあります。
  • オン・オフ現象
    お薬の効果が突然なくなり、動けなくなってしまったり、効果が突然あらわれて、急に動けるようになる現象です。お薬の追加や変更などによりオン・オフ現象が改善することがあります。
  • ジスキネジア
    お薬が効きすぎて手足が勝手に動いてしまう現象です。お薬の量や種類を調整することで、ジスキネジアが軽減することがあります。

その他の注意事項

パーキンソン病のお薬の中には、自動車の運転をしないよう決められているものがあります。また、心臓病の定期検査を受けなければいけないものもあります。
医師や薬剤師から説明がありますので、必ず従ってください。

手術による治療

パーキンソン病では、お薬による治療が中心となりますが、お薬で症状のコントロールが困難な場合や、副作用のため必要な量を飲むことができない場合には、手術を行うことがあります。
場合によっては早期に手術が必要な患者さんもいます。
手術で完全にパーキンソン病が治ってしまうわけではなく、お薬による治療を補助する役割と考えてください。
手術を受けるためには、いくつかの条件がありますので、主治医の先生とよく話合って手術をお願いするかどうかを決めましょう。
マスコミで報道されたからといって、あなたに手術が向くかどうか,また必要かどうかは解りません。自分で判断せずに、主治医と相談の上で、主治医の紹介状をもって脳外科を受診する様にしましょう。