PADを見逃さないために
痛いのは年のせい?
歩くと下肢が痛くなる原因にはいろいろあります。「年のせいだから」と自分で判断したり、他の病気だと勘違いして、PADを悪化させてしまう患者さんもまれではありません。
他の病気と間違えないように
足の痛みでとくに間違えやすいのは、脊柱管狭窄症※1 や関節疾患、深部静脈血栓症※2 などによる歩行中の痛みです。PADによる痛みには「ある程度の距離を歩くと筋肉の痛みのために歩けなくなる。しかし少し休むとまた歩ける」という特徴があります。
高血圧や糖尿病など、動脈硬化症になりやすい人にそのような症状が現れたときは、医師にご相談ください。
具体的な症状の見分け方
動脈系の疾患
PAD(末梢動脈疾患)による痛み
一定の距離を歩くとふくらはぎ付近の筋肉の痛みで歩けなくなるが、しばらく休むとまた歩けるようになる(休む姿勢は関係ない)。
骨・筋肉・神経系の疾患
腰部脊柱管狭窄症による痛み
一定の距離を歩くと痛みで歩けなくなるが、少しかがむ姿勢で休んだり、姿勢を変えると痛みがやわらぎ、歩けるようになる(間欠性跛行)。
変形性腰椎症による痛み
腰からお尻にかけて痛み、足のしびれがある。動作の始まりや、疲労しているとき特に痛む。腰を後ろに反らせると痛みが強まる。
坐骨神経痛による痛み
下半身の広範囲(腰から足裏にかけて)に強い痛みやしびれがある。皮膚表面近くの激痛が連続する。通常左右どちらか一方の足に起こり、足の外側にそって痛むことが多い。
その他、筋・筋膜性腰痛(肉離れ)やリウマチ性多発筋性症、足底筋膜炎などによる痛みがあります。
静脈系の疾患
深部静脈血栓症による痛み
足からの血液の流れが滞って、足にむくみが現れ、立位時や座位時にむくみが悪化します。また、血流が滞るために歩行時に足が痛みます。
ロングフライト症候群は、正式名を深部静脈血栓症といい、長時間同じ体勢でいることで、足の静脈に血液の塊ができ、これが原因となって発症します。血液の塊が流れて肺に詰まると1時間以内に死亡することもある急性の病気です。
これに対し、末梢動脈疾患は、足の動脈に発症し、徐々に進行していきます。
末梢動脈疾患 | ロングフライト症候群 | |
---|---|---|
発症部位 | 動脈 | 静脈 |
進行の仕方 | 徐々に進行 | 急激 |
- ※1脊柱管狭窄症:神経が通っている脊柱管が変形して狭くなることで神経を圧迫し、しびれや痛みを生じます。
- ※2深部静脈血栓症: 静脈にできた血栓が血液中を流れて小さな血管に詰まり、塞栓症などを起こします。 ロングフライト症候群などと呼ばれる症状がこれにあたります。
腰や下肢の痛みには様々な症状が有りますが、専門家による総合的な判断を行わないと分からない疾患もあります。
ご自身で病気を判断せず、医療機関を訪問して診断を受けてください。