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結核 - 古くて新しい病気結核は世界の問題

アジアやアフリカなどの発展途上国で特に患者さんが多いのです

世界の結核は?

図12 世界の新発生患者の分布

世界中で年間に1040万人が新規に結核を発病し、140万人が結核で亡くなられています(表・図12)。これらの指標は、この数年来やっとごく緩やかな下降傾向をたどり始めました。患者さんが多いのは発展途上国です。結核はなかなか減らない病気で「再興感染症」とよばれています。とくに最近は「HIV感染合併結核」「多剤耐性結核」など、質的にも難しい問題が浮上しています。

  • 表に掲げた数の他にHIV合併結核による死亡があり、世界では39万人に達します。

表 世界の結核負担(患者・死亡発生件数、WHO推定 2018年)

  新発生患者数(千) 死亡者数(千人) 患者中HIV陽性率(%)
アフリカ 2,450 397 25.1
アメリカ 289 17 10.0
東地中海 810 77 0.9
ヨーロッパ 259 23 11.8
南東アジア 4,370 637 3.2
西太平洋 1,840 90 2.2
世界 10,000 1,240 8.6
  • HIV感染者を含まない

WHO: Global Tuberculosis Report 2019

世界の結核に対するとり組みはどうなっているの?

世界で推進される結核の治療システム、DOTSってなに?

DOTS(Directly Observed Treatment, Short-Course:直接服薬確認治療)とは、治療薬を確実に患者さんに服用してもらうために、WHOが打ち出した戦略です。
1989年にWHO(世界保健機関)の結核対策課長に就任した古知新(こち・あらた)博士は、国際社会が結核問題を軽視していることを批判し、強力な治療方式であるDOTSを開発し、普及させました。それまで途上国では採用できなかった高価な薬剤を確実に患者さんに服用させるシステムで、主として、医療従事者が直接患者さんに薬を手渡し目の前で服用を見届けるという方法で成果をあげています。
この方式はすべての途上国はもちろん米国のような先進国でも採り入れられ、世界標準の結核治療方式になりました。日本でも「感染症法」で「患者が規則的に服薬を完遂するように保健所と主治医が連携して患者を支援すること」が規定されています。これが「日本版DOTS」と言われ、患者さんや地域の状況に応じたやり方で服薬の支援と確認が行われています(「結核の症状」参照)。

世界の結核対策はひいては日本の結核撲滅にもつながるのです

DOTSの開発がきっかけとなり、国際的にも結核対策の重要性が認識されるようになりました。アジア、アフリカでの結核の増加は、国際交流のさかんな現代社会においては、「対岸の火事」では済まされない状況にあります。そこで、結核撲滅のために、世界が一丸となって取り組むための方策が次々に行われています。

  • 1993年WHOが世界結核緊急事態宣言を出し、途上国と先進国、援助機関に問題への注意を呼びかけました。
  • 世界銀行が「DOTSを用いた結核対策は有利な投資である」として中国やインドのような国々の結核対策に大規模な資金援助(融資)を始めました。
  • WHOが中心になって、結核対策の関連する政府、民間の機関・団体が大同団結した「ストップ結核パートナーシップ」が結成され、途上国を中心に世界の結核対策推進への強力なサポーターとなりました。この組織には「世界抗結核薬基金」(Global Drug Facility)があり、DOTS戦略を進める途上国に良質な抗結核薬を無償で供給しています。
  • 2000年の沖縄G8サミットでの日本の提唱がきっかけとなり、感染症が途上国の開発の障害になっているとの認識が先進国の間に広まり、国連の主導で「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」が設置され、対策への多大な資金提供が始められました。

HIV感染患者さんの間で結核が流行

HIV感染、そしてエイズは免疫機能を著しく低下させる病気であり、アフリカを中心とした途上国で最大の結核リスク要因であるといえます。この数年やっと増勢は弱まりましたが、まだまだ大きな問題です。

残された結核対策の課題

多剤耐性結核とは?

結核菌は、結核の治療薬に対して抵抗性がついてしまい、薬が効かなくなってしまうことがあります(耐性化)。とくに手ごわいのが現在の結核治療の中でもっとも重要なイソニアジドとリファンピシンという2つの薬剤に同時に耐性となってしまう「多剤耐性結核」です。世界的に見て、最近この多剤耐性結核が増加しており、結核の増加を考える上で、現在もっとも深刻な問題になっています。日本でも決して油断はできません(図13)。図13には、最もよく用いられる一次抗結核薬の少なくとも一剤に耐性(図13「何らかの」耐性)頻度も示してあります。

図13 日本の薬剤耐性結核の頻度

多剤耐性結核が生まれる背景としては、十分な治療を受けられない場合、または、薬剤の服用が不規則であったり、途中で中断してしまったりすることが挙げられます。治療を終え、結核が治ったようにみえても約2~5%の患者さんで再発が起こります※1※2。図13の右側(既治療患者)はそのような患者さんでは薬剤耐性になっていることが多いことが示されています。一方、不幸にも耐性結核の患者さんから感染を受けて発病した人は最初から薬剤耐性です(初回治療患者、図13左側)。

  1. 1Chang, KC. et al.:Am. J. Respir. Crit. Care. Med. 174, 1153-1158, 2006
  2. 2Ryoken, IJTLD 19(2), 157-162, 2015

薬剤耐性患者さんの治療経過

主軸の薬であるリファンピシンとイソニアジド(ヒドラジド)に同時に効かなくなると(多剤耐性)、結核の治療はとても困難になります。
治療には副作用の強い薬を何種類も、長期にわたって使わなければなりません。場合によっては手術が必要なこともあります。
それでも成績はあまりよくなく、日本でもごく最近まで、治癒が確認されたのは50~60%程度で、残りの多くは死亡するか菌が止まらないままでした。

  • 吉山崇:結核, 80, 686-693, 2005

多剤耐性結核治療の新薬の開発・導入

この問題は、日本では新たに発生する結核患者の0.7%程度ですが、世界的には10%以上にも上る国が少なくありません(ロシア37%、その他の旧ソ連諸国20-30%、中国7%、ベトナム4%、ジンバブエ4%など)。これの対策として有効な薬剤の出現が望まれていましたが、最近相次いで強力な新薬が導入され、効果が期待されています。ただし、これらの新薬に対する耐性が作られないように、DOTSの厳格な適用を含む正しい使用法とそれを支えるための技術の開発(薬剤耐性検査法、早期診断技術等々)がさらに望まれるところです。