ケンフェロールとは?

酸素を効率的に利用し、今よりもエネルギーが作り出せるようになれば、健康の維持・増進につながります。
細胞内の酸素の利用効率を上げ、エネルギー産生を助ける働きをもつ植物由来の食品成分として、今注目されているのが「ケンフェロール」です。

酸素の利用効率を向上させる成分「ケンフェロール」とは

「ケンフェロール」は植物に含まれるフラボノイドの一種で、抗酸化や抗炎症作用をはじめ、抗不安、鎮痛、抗アレルギー作用も報告されている苦味や辛味の食品成分です。
ブロッコリー、ケール、キャベツなどのアブラナ科の植物、豆類や茶葉などに多く含まれることが知られています。

ケンフェロール分子構造図

低酸素環境で生活する民族の食事に秘密が!

世界一速く、そして長く走るといわれるメキシコのタラウマラ族や、トップクラスのマラソンランナーを輩出するケニアのカレンジン族は、いずれも標高2,000mを超える酸素濃度の低い高地に住んでいます。彼らの持つ高い持久力の秘密が食生活に隠されているのではないかという仮説から、主食である雑穀と豆類、341種類に含まれている成分を調べた結果、「ケンフェロール」にたどりつきました。

ケンフェロールは低酸素環境下での細胞のエネルギー産生を向上させる

低酸素環境下で細胞(筋芽細胞)を培養すると、エネルギー(ATP)の含有量は低下してしまいますが、細胞にケンフェロールが作用するとエネルギー含有量は低下しないことが分かりました。このことから、ケンフェロールは、細胞に酸素が不足した状態において、少量の酸素を効率良く利用し、エネルギー産生を高めることが示唆されました。

  • C2C12筋芽細胞を2x104cells/200μLで96-wellプレートに播種し、10%ウシ胎児血清含有Dulbecco’s modified Eagle’s mediumで一晩培養し、培養後ATP Assay kitを用いて細胞内ATP含有量を測定した。
  • 出典:Mizokami, T. et al., J Funct Foods. 2021; 85: 104510. より改変
ATP含有量を表すグラフ
MEAN±SD
*:P<0.05 vs ケンフェロールなし 21%, †:P<0.05 vs ケンフェロールなし 3%
  • C2C12筋芽細胞を2x104cells/200μLで96-wellプレートに播種し、10%ウシ胎児血清含有Dulbecco’s modified Eagle’s mediumで一晩培養し、培養後ATP Assay kitを用いて細胞内ATP含有量を測定した。
  • 出典:Mizokami, T. et al., J Funct Foods. 2021; 85: 104510. より改変

低酸素環境で植物を栽培すると、ケンフェロール量が増加する!

植物に含まれるケンフェロールの量を調べるうちに、同じ植物でも育った場所や環境で差があることがわかりました。例えば、平地栽培と高地栽培の野菜で比較すると、酸素が薄い高原栽培の野菜は、低地栽培と比べ、何倍ものケンフェロールが含まれていました。ただし、この結果には土壌に含まれる栄養の違いなどの影響も考えられるため、同じ水耕栽培で環境条件を正常酸素環境と低酸素環境に分けて育ててみたところ、やはり低酸素環境で栽培したものは、正常酸素環境に比べ、ケンフェロールの含有量は約2倍以上に増加していました。

キャベツ・カイワレ大根・ブロッコリースプラウトに含まれるケンフェロール含有量を表すグラフ
  1. 平地と高地で栽培されたキャベツを購入し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用してケンフェロール含有量を定量。
  2. 酸素制御装置を備えたチャンバーを用いて、正常酸素環境(21%酸素濃度)あるいは人工低酸素環境(17.5%酸素濃度:高度1500mに相当)でカイワレ大根とブロッコリースプラウトを発芽させ、1週間栽培。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用してケンフェロール含有量を定量。
  • 出典:Mizokami, T. et al., J Funct Foods. 2021; 85: 104510.
キャベツに含まれるケンフェロール含有量を表すグラフ
MEAN±SD *:P<0.05 vs 平地野菜
  1. 平地と高地で栽培されたキャベツを購入し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用してケンフェロール含有量を定量。
  • 出典:Mizokami, T. et al., J Funct Foods. 2021; 85: 104510.
カイワレ大根・ブロッコリースプラウトに含まれるケンフェロール含有量を表すグラフ
MEAN±SD *:P<0.05 vs 正常酸素環境
  1. 酸素制御装置を備えたチャンバーを用いて、正常酸素環境(21%酸素濃度)あるいは人工低酸素環境(17.5%酸素濃度:高度1500mに相当)でカイワレ大根とブロッコリースプラウトを発芽させ、1週間栽培。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用してケンフェロール含有量を定量。
  • 出典:Mizokami, T. et al., J Funct Foods. 2021; 85: 104510.

監修:北翔大学大学院 生涯スポーツ学研究科 教授 沖田 孝一 先生

旭川市生まれ。旭川医科大学卒業後、北海道大学医学部循環病態内科学講座にて医師としての研鑽を積む。総合内科専門医、循環器専門医として心臓病患者の診療に従事しつつ、各種疾患の骨格筋における酸素利用障害に着目した運動生理学的研究および運動療法の研究に携わる。また、日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本医師会認定健康スポーツ医としてジュニア・トップアスリートの育成に関わり、現職に至っている。

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