パリで〝入賞〟目指す田澤廉
どんな状況でも外さない日本長距離界の至宝
田澤 廉 選手(陸上)
田澤 廉 選手(陸上)
社会人1年目のシーズンを苦悩しながらも最後まで駆け抜けた。8月のブダペスト世界選手権10000mで15位に入ると、12月の日本選手権10000mで27分22秒31の自己ベスト。元日の全日本実業団駅伝(ニューイヤー駅伝)は3区でトップを独走し、チームの日本一に貢献した。どんな状況でも外さない〝強さ〟を発揮してきた田澤廉(トヨタ自動車)。その秘訣は日々のコンディショニングにあった。
駒澤大学の〝絶対エース〟として君臨した田澤廉。大学4年生だった2022年はオレゴン世界選手権10000mに出場すると、チームを初の学生駅伝3冠に導いた。
社会人1年目のシーズンとなった2023年は怒涛の日々を過ごしてきた。春は3月のThe Ten(米国・カリフォルニア)10000mで27分28秒04。5月はゴールデンゲームズinのべおか10000mで27分51秒21、NIGHT OF THE 10000m PB'S(英国・ロンドン)で27分40秒46をマークした。夏には日本代表として国際大会3試合に10000mで出場する。7月のアジア選手権(タイ・バンコク)で優勝(29分18秒46)すると、8月の世界選手権(ハンガリー・ブダペスト)で15位(28分25秒87)。9月のアジア大会(中国・杭州)は塩尻和也(富士通)と交互にレースを引っ張り、4位(28分18秒66)に入った。
充実したトラックシーズンだったと言えるが、本人は「成長しない1年だったなと感じています」と自分に厳しかった。
「世界陸上の代表をつかむために、いろんな大会に出過ぎて、自分が思っている練習が全然できなかったんです。前の年と違って、夏合宿のような強化期間も取れませんでした。自分自身の成長に直結しなかったと思っています」
それでも随所に〝進化〟を感じる場面があったという。
「世界陸上は7000mぐらいまでしっかりついていくことができました。オレゴン大会よりはいい走りができたと思います。それに日本代表を3度経験して、海外レースも5本走りました。この経験値は今後に生かせるんじゃないでしょうか」
ハイレベルのレースだけでなく、バンコクでは酷暑での戦いも体感。レース後、脱水症状に陥り、立てないくらいに消耗したという。連戦の疲労と、日の丸のプレッシャー。田澤は心身ともに削られていた。
アジア大会後はしばらく練習ができないくらい落ち込んだが、11月には米国・アルバカーキで3週間の高地トレーニングを実施。12月10日の日本選手権10000mは後半、腰痛に苦しめられながらも27分22秒31の自己ベストで4位に食い込んだ。そして全日本実業団駅伝は3区で区間6位。トップを独走し、チームの8年ぶりの日本一に貢献した。
「日本選手権はアメリカでの3週間しかまともな練習ができなくて、正直、27分40秒ぐらいかなと思っていたんです。それでも自己ベスト(27分23秒44)を1秒更新できたのは、評価してもいいのかな。ニューイヤー駅伝も出場するか悩んだほど状態は悪かったんですけど、チームに恩返しする気持ちで走りました」
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