大塚製薬株式会社

医療関連事業
2014年3月24日

大塚製薬創製の「サムスカ®
腎臓の希少疾病ADPKDの世界初の治療薬として日本で承認

  • 「サムスカ錠」は、これまで治療薬のなかった常染色体優性多発性のう胞腎(ADPKD※1)の進行を 抑制する初めての治療薬として、世界に先駆け日本で承認された。この承認により病気の進展抑制が可能となり、ADPKDの治療の発展が期待される
  • ADPKDは、のう胞が多数でき腎臓が大きくなる遺伝性の疾患。病気の進行により高血圧、血尿、腹部の痛みなどが現れ、症状や合併症に対する治療をしても次第に腎機能が低下する。70歳までに約半数が末期腎不全に至って透析や腎移植が必要となる。希少疾病の中でも患者数は多く、日本3万人、欧州20万人、米国12万人とされる
  • 大塚製薬は2004年からADPKDの治療薬開発に取り組み、世界15カ国1,400人以上の患者さんを対象とした国際共同臨床試験で腎臓の容積増加率をプラセボと比較し約50%抑制することが確認された。欧州では2013年12月に申請受理、米国では、FDAの審査完了通知を受け追加データ等協議中

大塚製薬は、「サムスカ」を服用されるADPKD患者さんの安全性確保のために、主治医に対する使用上の注意喚起、安全性情報の収集とフィードバックに注力し、本剤の適正使用を進めてまいります。

  • 本剤は、適正使用について理解していただくためのe-Learningを受講した医師(登録医)のみ処方が可能です。

大塚製薬株式会社(本社:東京都、代表取締役社長:岩本太郎、以下「大塚製薬」)は、「サムスカ®錠7.5mg、15mg(一般名:トルバプタン)」に関し、常染色体優性多発性のう胞腎(ADPKD)の追加効能の承認を世界に先駆け日本で初めて取得しました。また「サムスカ®錠30mg」がADPKDの効能で新たに承認されました。

「サムスカ」は、大塚製薬の徳島の研究所において多くの人の努力のもと26年をかけて開発した薬剤で、バソプレシンV2-受容体拮抗作用により水だけを出す利尿剤として世界14カ国・地域で使用されています。一方で、バソプレシンV2-受容体を介したcAMP産生の抑制によりADPKDの腎のう胞の増殖・増大を抑制することが発見され※2、大塚製薬はもう一つの新たな挑戦として2004年から、希少疾病であるADPKDの治療薬開発に米国メイヨー・クリニックのヴィセンテ・E・トーレス教授を筆頭に世界の専門医とともに取り組んできました。1,400人以上のADPKD患者さんを対象に世界15カ国で行われた国際共同臨床試験(TEMPO3:4試験※3)において「サムスカ」は、プラセボと比較し腎臓の容積の増加率を約50%有意に抑制することが証明されました。この試験結果は2012年11月にニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン誌に掲載されました※4

大塚製薬代表取締役社長の岩本太郎は「末期腎不全に至る希少疾病のADPKD治療薬の開発は困難な道のりでした。患者さんにとって、長年にわたり治療薬のない病気を抱えることは大きな心の負担となります。この度の承認により患者さんやご家族に治療の光を提供できることを大変嬉しく思います。これまでにない作用機序を持つ『サムスカ』だからこそ新カテゴリーとなる適応症での開発が可能となったと確信しています。安全性や有効性について厳格に調査を進め、日本だけでなく世界で同じ疾患を抱える患者さんにサムスカをお届けしていきたいと思います」と述べています。

また杏林大学医学部多発性嚢胞腎研究講座 教授 東原英二先生は「ADPKDの患者さんにおいてQOLを大きく損なう腎臓の増大を緩和する治療薬が使用できることになった点は、たいへん重要であり、患者さんやそのご家族、そして我々医療従事者にとっても嬉しい限りです。しかしながら『サムスカ』の使用上の留意事項も良く理解する必要があります。ADPKDに対する世界初の薬物治療が日本で始まることの意義と責任を自覚し、事故なく安全にこの薬剤の使用が定着することを期待します」と述べています。

大塚製薬は、「サムスカ」を使用される医療従事者と患者さんやご家族のために、的確な薬剤情報、注意喚起、疾病、および治療の選択肢など、必要とされる情報を提供し、本剤の適正使用に取り組んでまいります。

【ADPKD治療の「サムスカ」適正使用のための取り組み】

  • e-Learningシステム: 医師がADPKDと「サムスカ」の適正使用について的確に理解し、処方医として登録するためのシステム
  • ADPKDウェブサイト: ADPKDの診断、症状などについて解説するウェブサイト
    http://www.adpkd.jp/
  • 「サムスカ錠」関連資料:医師向け(適正使用)・薬剤師向け(調剤制限)・患者さん向け(注意事項)

【ADPKDについて】

ADPKDは、遺伝子の変異により両方の腎臓にのう胞(液体が詰まった袋)が無数にできて腎臓が何倍にも大きくなり、腎機能が徐々に低下していく遺伝性の病気です。両親のいずれかがADPKDの場合、50%の確率で子どもに遺伝します。多くの場合は30~40歳代以降症状が現れ、血尿、腹痛・腰背部痛、腹部膨満などが見られます。また、腎機能が低下する前から高血圧を合併することが多く、脳動脈瘤や肝のう胞なども高い頻度で合併します。腎機能が低下してくると腎移植または透析が必要(透析の原因疾患のうち第4位がADPKD)となり、70歳までに半数近くの患者さんが末期腎不全に至ると言われています。根本的な治療方法は確立されておらず有効な治療薬もないため、ADPKDを正確に診断して治療を施すことができる医師も多くないといわれています。遺伝性の疾患のなかでも発症頻度が高く約4,000人に1人が患っていると推定され、日本には約3万人※5、欧州には約20万人※6、米国には約12万人※7の患者さんがいます。

ADPKDについての詳細は、ウェブサイト【http://www.adpkd.jp/】でご覧いただけます。

  • ※1 Autosomal Dominant Polycystic Kidney Disease
  • ※2 Gattone, VH et al. "Inhibition of renal cystic disease development and progression by a vasopressin V2 receptor antagonist"
    Nature Medicine, 2003: 9 (10): 1323-1326
  • ※3 Tolvaptan Efficacy and Safety in Management of Autosomal Dominant Polycystic Disease and its Outcomes
  • ※4 Torres, VE et al. "Tolvaptan in Patients with Autosomal Dominant Polycystic Kidney Disease". The New England Journal of Medicine, 2012: 367 (25): 2407-2418
  • ※5 Higashihara E, et al. Prevalence and renal prognosis of diagnosed autosomal dominant polycystic kidney disease in Japan. Nephron.1998;80:421-427
  • ※6 EMA資料、EU/3/13/1175.2013
    http://www.ema.europa.eu/ema/index.jsp?curl=pages/medicines/human/orphans/2013/09/human_orphan_001257.jsp&mid=WC0b01ac058001d12b
  • ※7 Data on File. Tolvaptan: ADPKD Epidemiology Study Reporting Diagnosed Cases, TOLV-002

「サムスカ」の概要 (下線部は今回の追加)

ADPKDに対する使用にあたっては、留意事項がありますのでお知らせいたします。

  • 本剤は、適正使用について理解していただくためのe-Learningを受講した医師(登録医)のみ処方が可能です。
  • 薬局においては、登録医による処方であることが確認された場合のみ調剤を行います。
  • 本剤投与開始に先立ち、本剤は疾病を完治させる薬剤ではないことや重篤な肝機能障害が発現するおそれがあること、適切な水分摂取及び定期的な血液検査等によるモニタリングの実施が必要であることを含め、本剤の有効性及び危険性について医師は患者に十分説明し、文書による同意を得る必要があります。

これらの留意事項は、本剤の重篤な高ナトリウム血症や肝機能障害などのリスクを踏まえ、本剤投与によるベネフィットが上回る適切な投与患者の選定や、患者ご自身による同意、少なくとも投与開始時は入院下で行うこと、及び本剤投与中の血清ナトリウム濃度や肝機能検査のモニタリングなどを徹底するために、求められるものです。

参考資料

国際共同臨床試験(TEMPO3:4試験)について

この試験は、世界15カ国1,445人のADPKD患者さんを対象に3年間にわたりトルバプタンもしくはプラセボが投与された国際共同臨床試験です。本試験では、ADPKDの進行に対する有効性と安全性の評価が行われました。その結果トルバプタンは、プラセボと比較し腎臓の容積の増加率を約50%有意に抑制することが示されました。トルバプタンは、バソプレシンV2-受容体拮抗作用により、バソプレシンによる細胞内cAMP の産生を抑制することで腎のう胞の増大を抑制すると考えられています。

  • 米国、日本、ドイツ、フランス、ポーランド、オーストラリア、イギリス、ベルギー、イタリア、オランダ、アルゼンチン、カナダ、ルーマニア、ロシア、デンマーク

「サムスカ」のグローバル展開について

大塚製薬が創製した「サムスカ」は、選択的にバソプレシンV2-受容体を阻害することによって腎のう胞の増大を抑制し、常染色体優性多発性のう胞腎(ADPKD)の進行を抑制するファーストインクラスの治療薬として世界で初めての承認となります。欧州においては2013年12月に申請受理されており、米国では、FDAの審査完了通知を受け追加データ等について協議を続けています。

「サムスカ」は、26年をかけて開発された水だけを出す利尿剤として米国、欧州を始め世界14カ国・地域で使用されています。米国では2009年6月に低ナトリウム血症で発売、欧州では同年9月に抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)による低ナトリウム血症の治療で発売されています。日本では、2010年に心不全における体液貯留、2013年に肝硬変における体液貯留で発売しました。現在は、その他の体液貯留性の疾患を対象とした開発を進めています。