大塚製薬株式会社
H. ルンドベックA/S

医療関連事業
2019年1月8日

国内初のアルコール依存症における飲酒量低減薬
「セリンクロ錠10mg」が製造販売承認を取得

大塚製薬株式会社(本社:東京都、以下「大塚製薬」)とH.ルンドベックA/S(本社:デンマーク、コペンハーゲン、以下「ルンドベック社」)は、アルコール依存症患者における飲酒量を低減する治療薬として「セリンクロ®錠10mg (一般名:ナルメフェン塩酸塩水和物)」の国内における製造販売承認を大塚製薬が本日取得しましたので、お知らせします。

本剤は、飲酒の1~2時間前に服用することで、中枢神経系に広く存在するオピオイド受容体調節作用を介して飲酒欲求を抑え、アルコール依存症患者さんの飲酒量を低減する薬剤です(服薬遵守の上、飲酒量の低減を目的とした心理社会的治療と併用すること)。欧州では、2013年からルンドベック社により飲酒量低減薬として承認・販売されています。日本では、大塚製薬とルンドベック社が共同で開発を進めてきました。抗酒薬や断酒維持を目的とした断酒補助剤は国内でもすでに販売されていますが、多量な飲酒を繰り返すアルコール依存症患者さんが飲酒量を減らしていく過程を補助する薬剤はありませんでした。

国内の臨床試験において、本剤は12週後の多量飲酒した日数*1のベースラインからの変化量および総飲酒量*2をともにプラセボに対して有意に減少させ、飲酒量低減に対する有効性が確認されました。また、1日の平均飲酒量に基づくリスクレベル*3はプラセボと比較して改善がみられました。主な副作用は悪心、浮動性めまい、傾眠、頭痛、嘔吐、不眠症、倦怠感でした。

アルコール依存症は、多量な飲酒を繰り返すことで飲酒したいという欲求が強くなり、飲酒行動をコントロールすることが難しくなる疾患です。健康や仕事、家庭生活に重大な支障をきたすことで、社会的・経済的な影響が大きいとされています。最新のアルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドラインでは、最終的な治療目標は原則的に断酒の達成とその継続とした上で、飲酒量低減治療は断酒に導くための中間的ステップあるいは治療目標の1つとして位置づけられています。セリンクロが飲酒量低減治療の新たな選択肢となることにより、お酒を減らしたいと望むアルコール依存症患者さんの治療に貢献することが期待されます。

大塚製薬では、専門医および本剤の処方が想定される医師が所属される学会との協力のもと、アルコール依存症の診断・治療に関する講習会を実施し、最新のアルコール依存症治療の啓発・周知を通じて、患者さんの状態に応じた適切な治療が行われるよう活動してまいります。

  1. 1多量飲酒した日数(HDDs):1日のアルコール消費量が男性60g超、女性40g超の1ヵ月あたりの日数(日/月)
  2. 2総飲酒量(TAC):1ヵ月あたりの平均アルコール消費量(g/日)
  3. 3以下に表を掲載

1日の平均飲酒量に基づくリスクレベル

セリンクロの概要

製品名 セリンクロ錠10mg
一般名 ナルメフェン塩酸塩水和物
効能・効果

アルコール依存症患者における飲酒量の低減

効能・効果に関連する使用上の注意

(1) アルコール依存症の治療目標は、原則、断酒の達成とその継続である。アルコール依存症に伴う精神・身体症状及び患者の意思を総合的に勘案し、断酒ではなく飲酒量低減を治療目標とすることが適切と判断された患者に対して本剤を投与すること。

(2) アルコール依存症治療の主体は心理社会的治療であることから、服薬遵守及び飲酒量の低減を目的とした心理社会的治療と併用すること。

(3) アルコール依存症の診断は、国際疾病分類等の適切な診断基準に基づき慎重に実施し、基準を満たす場合にのみ投与すること。

(4) 習慣的に多量飲酒が認められる患者に使用すること。その目安は、純アルコールとして1日平均男性60g超、女性40g超の飲酒量とすること。

(5) 緊急の治療を要するアルコール離脱症状(幻覚、痙攣、振戦せん妄等)を呈している患者では、離脱症状に対する治療が終了してから使用すること。

(6) 飲酒量低減治療の意思のある患者にのみ使用すること。

用法・用量

通常、成人にはナルメフェン塩酸塩として1 10mg を飲酒の12時間前に経口投与する。ただし、1 1 回までとする。なお、症状により適宜増量することができるが、1 日量は20mg を超えないこと。

用法・用量に関連する使用上の注意

(1) 服薬せずに飲酒し始めた場合には、気付いた時点で直ちに服薬すること。ただし、飲酒終了後には服薬しないこと。

(2) 本剤の投与継続及び治療目標の見直しの要否について定期的に検討し、漫然と投与しないこと。

(3)重度の肝機能障害のある患者(Child-Pugh分類C)には、1日最高用量を10mgとすること。軽度及び中等度の肝機能障害のある患者(Child-Pugh分類A及びB)並びに重度の腎機能障害のある患者(eGFR 30mL/min/1.73m2未満)では、血中濃度が過度に上昇するおそれがあるので、20mgに増量する場合には、患者の状態を観察しながら慎重に行うこと。