大塚製薬株式会社

医療関連事業
2023年11月6日

新規APRIL抗体「シベプレンリマブ」
IgA腎症を対象としたフェーズ2試験の良好な結果について
The New England Journal of Medicineに掲載

  • IgA腎症を対象としたフェーズ2試験において新規APRIL抗体であるシベプレンリマブが示した良好な結果が、The New England Journal of Medicineの掲載とともに、米国腎臓学会(ASN)で発表された
  • 本剤の12ヵ月投与により、IgA腎症患者において、腎機能低下のサロゲートマーカーであるuPCR(尿蛋白/クレアチニン比)がプラセボと比較して有意に減少したことが示された
  • IgA腎症は、成人における腎不全の最も一般的な原因であり、平均余命を10年程度短縮するといわれている

    大塚製薬株式会社(本社:東京都、代表取締役社長:井上眞、以下「大塚製薬」)と Visterra Inc.(本社:米国マサチューセッツ州、以下「ビステラ社」)は、シベプレンリマブ(JAN:未取得、INN:sibeprenlimab、開発コード:VIS649)のIgA腎症を対象としたフェーズ2試験の結果が The New England Journal of Medicineに掲載*1されましたので、お知らせします。試験結果は、2023年11月2日から5日まで米国ペンシルバニア州フィラデルフィアで開催された米国腎臓学会(ASN)のlate-breaking poster sessionでも発表されました。

    シベプレンリマブは、IgA腎症の発症と進行に重要な役割を果たすと考えられている免疫細胞増殖因子であるサイトカインAPRIL(A PRoliferation Inducing Ligand)の作用を阻害するヒト化モノクローナル抗体です*1.4.5。フェーズ2試験(ENVISION)では、IgA腎症と診断された成人患者155人を、シベプレンリマブ 2、4、8mg/kgまたはプラセボの毎月静脈内投与群に無作為に割り付けて実施しました。主要評価項目は、12ヵ月時点における尿蛋白/クレアチニン比(uPCR)のベースラインからの変化、主な副次評価項目は安全性と腎機能の指標である推算糸球体濾過量(eGFR)の変化でした*1.8

    本試験においてシベプレンリマブ群は、プラセボ群と比較してuPCRが有意に減少したことが示されました。主要評価項目である12ヵ月後のuPCRのベースラインからの低下率は、シベプレンリマブ2、4、8mg/kg群でそれぞれで47.2%、58.8%、62.0%、プラセボ群で20. 0%でした。また、副次評価項目であるeGFRの変化においてもシベプレンリマブ群で良好な結果が確認されています。年間のeGFRの変化は、シベプレンリマブ 2、4、8mg/kg群それぞれで-2.7、+0.2、-1.5 ml/1.73 m2、プラセボ群で-7.4ml/1.73m2でした。これは、プラセボ群に対してシベプレンリマブ群がeGFRを安定化させたことを反映しています。

    シベプレンリマブ群とプラセボ群における有害事象の発生率は同様でした。本試験および16ヵ月目までの追跡期間中、シベプレンリマブ群において、毒性または臨床的に意味のある免疫抑制は認められませんでした*1

    ビステラ社CEOのBrian J.G Pereiraは、「IgA腎症は原発性糸球体腎炎で最も一般的な病型であり、平均余命の短縮に関連しています。現在の治療では、慢性腎臓病の進行を抑える効果は限られていることから、この新しい疾患特異的な治療が非常に有益なものになることを期待しています」と述べています。

    大塚ファーマシューティカルD&Cの上級副社長兼医学責任者John Krausは、「この複雑で、生命を脅かす疾患であるIgA腎症患者さんのアンメット・メディカル・ニーズへの対応に一歩近づいた今回の結果を大変嬉しく思います。現在進行中のフェーズ3試験において、シベプレンリマブの可能性を引き続き評価していきます」と述べています。

    【IgA(免疫グロブリンA)腎症について】

    IgA(アイ・ジー・エー)腎症は、慢性腎臓病の原因疾患である慢性糸球体腎炎の1つで、同義語としてBerger(ベルジェ)病などがあります。世界的に最も一般的な原発性糸球体腎炎であり、成人における腎不全の最も一般的な原因です*2.3。この疾患は 10 年の平均余命の短縮と関連しており*.3、少なくとも 最適化された標準治療にもかかわらず、罹患患者の 30% は 20 ~ 30 年以内に腎不全にいたります*6.7。 現在の標準治療は、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)遮断薬と適切な血圧コントロールに基づくものの、腎不全のリスクは依然として高いことが課題となっています。

    【シベプレンリマブ(INN:sibeprenlimab、開発コード:VIS649)について】

    シベプレンリマブは、ヒト化免疫グロブリンG(IgG2)モノクローナル抗体であり、IgA腎症の病因に重要な役割を果たすことが証明されているガラクトース欠損IgA1(Gd-IgA1)の産生における重要な因子であるサイトカインAPRIL(A PRoliferation Inducing Ligand)に結合し、その生物学的作用を阻害します*1.4.5

    【APRIL(A PRoliferation Inducing Ligand)について】

    APRILは、腫瘍壊死因子(TNF:tumor necrosis factor)スーパーファミリーに属するサイトカインで、B細胞の分化に関わる増殖誘導リガンドです。B細胞のIgA産生細胞へのクラススイッチの誘導に関与しており、IgA腎症の病因において重要な役割を果たすサイトカインであると考えられています。

    【Visterra Inc.(ビステラ社)について】

    ビステラ社は大塚製薬の米国子会社である大塚アメリカ・インクの完全子会社として、腎臓病やその他の治療が困難な自己免疫疾患患者さんの治療に向けた革新的な抗体ベースの治療薬の開発に取り組んでいます。同社独自のHierotope®プラットフォームは、従来の治療アプローチでは十分に対処できなかった主要な疾患ターゲットに特異的に結合し、それを調節する生物製剤ベースの製品候補のデザインと設計を可能にしました。

    1. *1Mathur M, Barrat J, Chacko B, et al. A Phase 2 Trial of Sibeprenlimab in Immunoglobulin A Nephropathy Patients. NEJM. 2023
    2. https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2305635
    3. *2Floege J, Amann K. Primary glomerulonephritides. Lancet. 2016;387(10032):2036-2048.
    4. *3Hastings MC, Bursac Z, Julian BA, et al. Life Expectancy for Patients From the Southeastern United States With IgA Nephropathy. Kidney Int Rep. 2017;3(1):99-104.
    5. *4Mathur M, Barratt J, Suzuki Y, et al. Safety, Tolerability, Pharmacokinetics, and Pharmacodynamics of VIS649 (Sibeprenlimab), an APRIL-Neutralizing IgG2 Monoclonal Antibody, in Healthy Volunteers. Kidney Int Rep. 2022;7(5):993-1003.
    6. *5Chang S, Li XK. The Role of Immune Modulation in Pathogenesis of IgA Nephropathy. Front Med (Lausanne). 2020;7:92.
    7. *6Lai KN, Tang SC, Schena FP, et al. IgA nephropathy. Nat Rev Dis Primers. 2016;2:16001.
    8. *7Gleeson PJ, O'Shaughnessy MM, Barratt J. IgA nephropathy in adults - Treatment Standard [published online ahead of print, 2023 Jul 7]
    9. *8ClinicalTrials.gov. National Library of Medicine (U.S.). Safety and Efficacy Study of VIS649 for IgA Nephropathy Identifier:
    10. NCT04287985. https://classic.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04287985.