大塚製薬株式会社

医療関連事業
2024年10月22日

新規APRIL抗体「シベプレンリマブ」 
IgA腎症を対象としたフェーズ3試験の良好な中間解析結果について

  • フェーズ3(VISIONARY)試験の中間解析において、シベプレンリマブ投与9ヵ月後の24時間uPCR(尿蛋白/クレアチニン比)のベースラインからの変化が、プラセボ群と比較して統計学的に有意かつ臨床的に意義のある減少を示し、主要評価項目を達成した。シベプレンリマブの良好な安全性プロファイルは、これまでに報告されたデータと一致していた。
  • IgA腎症は、進行性の自己免疫性慢性腎臓病であり、現在の標準治療ではほとんどの患者さんが生涯のうちに末期腎不全に至る可能性がある。
  • 大塚製薬は、早期承認申請に向けてFDAに中間結果を報告する予定。本試験は継続中で、最終結果は2026年初頭に得られる見込み。

大塚製薬株式会社(本社:東京都、代表取締役社長:井上眞、以下「大塚製薬」)と米国子会社のOtsuka Pharmaceutical Development & Commercialization, Inc.(所在地:米国ニュージャージー州・プリンストン、以下「OPDC」)は、IgA腎症を対象としたシベプレンリマブ(一般名)のフェーズ3試験における中間解析結果において、主要評価項目を達成しましたので、お知らせします。

シベプレンリマブは、IgA腎症の発症と進行に重要な役割を果たすと考えられている免疫細胞増殖因子であるサイトカインAPRIL(A PRoliferation Inducing Ligand)の作用を阻害するヒト化モノクローナル抗体で、大塚製薬の子会社であるVisterra Inc. (本社:米国マサチューセッツ州、以下「ビステラ社」)が創製しました。IgA腎症は、進行性の自己免疫性慢性腎臓病であり、患者さんは生涯のうちに末期腎不全に至る可能性があります*1,2,3,4 。なお、シベプレンリマブはフェーズ2(ENVISION)試験の良好な結果を受け、IgA腎症を対象に、米国食品医薬品局(FDA)よりブレークスルーセラピー指定を取得しています。(https://www.otsuka.co.jp/company/newsreleases/2023/20231106_1.html

独立データモニタリング委員会により実施された中間解析では、フェーズ3(VISIONARY)試験(NCT05248646)において、主要評価項目であるシベプレンリマブ投与9ヵ月後の24時間uPCR(尿蛋白/クレアチニン比)のベースラインからの変化が、プラセボ群と比較して統計学的に有意かつ臨床的に意義のある減少を示し、主要評価項目を達成したことが明らかになりました。シベプレンリマブの安全性プロファイルは、これまでに報告されたデータと一致していました。本試験は、本疾患における試験では最大となる約530名の成人患者さんを対象とした多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験です。標準治療(最大耐用量のACE阻害薬またはARB に、必要に応じてSGLT2阻害薬を投与)を受けている成人のIgA腎症患者さんを対象に、シベプレンリマブ400mgを4週間ごとに皮下投与し、プラセボ群と比較してその有効性と安全性を評価しています5

OPDCの上級副社長兼医学責任者John Krausは、「本試験で得られた良好な中間解析の結果は、APRILを標的とすることで、新規治療に対するアンメットニーズに応え、この進行性腎疾患に苦しむ人々に新たな治療戦略を提供できる可能性があることを示しています。今回は中間解析の結果ですが、試験が完了し、全ての結果が出ることを楽しみにしています。大塚製薬は、IgA腎症の患者さん、その介護者、そして試験に参加し、この重要な研究に貢献してくれた研究者の皆さんに感謝しています」と述べています。

ビステラ社CEOのBrian Pereiraは、「シベプレンリマブの開発が順調に進んでいることを喜ぶとともに、IgA腎症患者さんに必要とされる根本治療として、疾患修飾薬による新たな治療選択肢になることを期待しています」と述べています。

フェーズ3試験は、副次評価項目であるeGFR(推算糸球体濾過量)で測定される24ヶ月間の腎機能変化を評価するために継続されており、2026年初頭に終了する予定です。大塚製薬は、今回の良好な中間解析結果に基づき、米国での早期承認申請に向けてFDAと協議を進めてまいります。

【IgA(免疫グロブリンA)腎症について】
IgA(アイ・ジー・エー)腎症は、慢性腎臓病の原因疾患である慢性糸球体腎炎の1つで、同義語としてBerger(ベルジェ)病などがあります。世界的に最も一般的な原発性糸球体腎炎であり、成人における腎不全の最も一般的な原因です。この疾患は 10 年の平均余命の短縮と関連しており、少なくとも最適化された標準治療にもかかわらず、罹患患者の30%は20~30 年以内に腎不全にいたります*6.7。 現在の標準治療は、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)遮断薬と適切な血圧コントロールに基づくものの、腎不全のリスクは依然として高いことが課題となっています*8

【シベプレンリマブ(INN:sibeprenlimab、開発コード:VIS649)について】
シベプレンリマブは、ビステラ社が創製したヒト化免疫グロブリンG(IgG2)モノクローナル抗体であり、IgA腎症の病因に重要な役割を果たすことが証明されているガラクトース欠損IgA1(Gd-IgA1)の産生における重要な因子であるサイトカインAPRIL(A PRoliferation Inducing Ligand)に特異的に結合し、その生物学的作用を阻害します*1,2,3

【Visterra Inc.(ビステラ社)について】

ビステラ社は大塚製薬の米国子会社である大塚アメリカ・インクの完全子会社として、腎臓病やその他の治療が困難な自己免疫疾患患者さんの治療に向けた革新的な抗体ベースの治療薬の開発に取り組んでいます。同社独自のHierotope®プラットフォームは、従来の治療アプローチでは十分に対処できなかった主要な疾患ターゲットに特異的に結合し、それを調節する生物製剤ベースの製品候補のデザインと設計を可能にしました。

  1. 1Mathur M, Barratt J, Chacko B, et al. A Phase 2 Trial of Sibeprenlimab in Immunoglobulin A Nephropathy Patients. NEJM. 2023 https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2305635
  2. 2Chang S, Li XK. The Role of Immune Modulation in Pathogenesis of IgA Nephropathy (nih.gov)
  3. 3Mathur M, Barratt J, Suzuki Y, et al. Safety, Tolerability, Pharmacokinetics, and Pharmacodynamics of VIS649 (Sibeprenlimab), an APRIL-Neutralizing IgG2 Monoclonal Antibody, in Healthy Volunteers. Kidney Int Rep. 2022;7(5):993-1003.
  4. 4Pitcher, D. Braddon, et. al Long-term outcomes in IGA nephropathy. Clinical journal of the American Society of Nephrology : CJASN. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37055195/.
  5. 5Otsuka Pharmaceutical Development & Commercialization, Inc.Visionary Study: Phase 3 Trial of Sibeprenlimab in Immunoglobulin A Nephropathy (IgAN). Clinicaltrials.gov.
  6. 6Cheung CK, Barratt J, Liew A, Zhang H, Tesar V, Lafayette R. The role of BAFF and April in IGA nephropathy: Pathogenic mechanisms and targeted therapies. Frontiers in nephrology. February 1, 2024.
  7. 7Lai K. Iga nephropathy. Nature reviews. Disease primers. 2016. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27189177/.
  8. 8Yeo SC et al. Is immunoglobulin A nephropathy different in different ethnic populations? April 2019. https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/nep.13592