大塚製薬株式会社
IgA腎症治療薬「シベプレンリマブ」
米国における生物学的製剤承認申請(BLA)予定について
大塚製薬株式会社(本社:東京都、代表取締役社長:井上眞、以下「大塚製薬」)と米国子会社のOtsuka Pharmaceutical Development & Commercialization, Inc.(所在地:米国ニュージャージー州・プリンストン、以下「OPDC」)は、成人のIgA腎症を対象としたシベプレンリマブ(一般名)について、本年10月に主要評価項目を達成したフェーズ3(VISIONARY)試験(NCT05248646)の良好な中間解析結果に基づいて米国食品医薬品局(FDA)と協議した結果、米国における生物学的製剤承認申請(Biologic License Application:BLA)を2025年前半に行うことを決定しましたので、お知らせします。
シベプレンリマブは、IgA腎症の発症と進行に重要な役割を果たすと考えられている免疫細胞増殖因子であるサイトカインAPRIL(A PRoliferation Inducing Ligand)の作用を阻害するヒト化モノクローナル抗体で、大塚製薬の子会社であるVisterra Inc. (本社:米国マサチューセッツ州、以下「ビステラ社」)が創製しました。IgA腎症は、進行性の自己免疫性慢性腎臓病であり、患者さんは生涯のうちに末期腎不全に至る可能性があります*1,2,3,4 。なお、シベプレンリマブはフェーズ2(ENVISION)試験の良好な結果を受け、IgA腎症を対象に、米国食品医薬品局(FDA)よりブレークスルーセラピー指定を取得しています。(https://www.otsuka.co.jp/company/newsreleases/2023/20231106_1.html)
OPDCの上級副社長兼医学責任者John Krausは、「シベプレンリマブのフェーズ3試験の良好な中間解析結果について FDA と協議する機会を得たことを大変うれしく思います。FDA からのフィードバックを受け、BLA 申請の準備を進めてまいります。大塚製薬は、腎臓病に関わるコミュニティに対する貢献を続けるなか、この革新的な治療薬を早期に市場に導入できることを心待ちにしています。本件において重要な役割を担われたIgA腎症の患者さん、介護者、医療関係者の皆様に心から感謝を申し上げます」と述べています。
フェーズ3試験は、副次評価項目であるeGFR(推算糸球体濾過量)で測定される24ヶ月間の腎機能変化を評価するために継続されており、2026年初頭に終了する予定です。
【シベプレンリマブ(INN:sibeprenlimab、開発コード:VIS649)について】
シベプレンリマブは、ビステラ社が創製したヒト化免疫グロブリンG(IgG2)モノクローナル抗体であり、IgA腎症の病因に重要な役割を果たすことが証明されているガラクトース欠損IgA1(Gd-IgA1)の産生における重要な因子であるサイトカインAPRIL(A PRoliferation Inducing Ligand)に特異的に結合し、その生物学的作用を阻害します*1,2,3。
【IgA(免疫グロブリンA)腎症について】
IgA(アイ・ジー・エー)腎症は、慢性腎臓病の原因疾患である慢性糸球体腎炎の1つで、同義語としてBerger(ベルジェ)病などがあります。世界的に最も一般的な原発性糸球体腎炎であり、成人における腎不全の最も一般的な原因です。この疾患は 10 年の平均余命の短縮と関連しており、少なくとも最適化された標準治療にもかかわらず、罹患患者の30%は20~30 年以内に腎不全にいたります*5.6。 現在の標準治療は、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)遮断薬と適切な血圧コントロールに基づくものの、腎不全のリスクは依然として高いことが課題となっています*7。
1. Mathur M, Barratt J, Chacko B, et al. A Phase 2 Trial of Sibeprenlimab in Immunoglobulin A Nephropathy Patients. NEJM. 2023 https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2305635
2. Chang S, Li XK. The Role of Immune Modulation in Pathogenesis of IgA Nephropathy (nih.gov)
3. Mathur M, Barratt J, Suzuki Y, et al. Safety, Tolerability, Pharmacokinetics, and Pharmacodynamics of VIS649 (Sibeprenlimab), an APRIL-Neutralizing IgG2 Monoclonal Antibody, in Healthy Volunteers. Kidney Int Rep. 2022;7(5):993-1003.
4. Pitcher, D. Braddon, et. al Long-term outcomes in IGA nephropathy. Clinical journal of the American Society of Nephrology : CJASN. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37055195/.
5. Cheung CK, Barratt J, Liew A, Zhang H, Tesar V, Lafayette R. The role of BAFF and April in IGA nephropathy: Pathogenic mechanisms and targeted therapies. Frontiers in nephrology. February 1, 2024.
6. Lai K. Iga nephropathy. Nature reviews. Disease primers. 2016. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27189177/.
7. Yeo SC et al. Is immunoglobulin A nephropathy different in different ethnic populations? April 2019. https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/nep.13592