大塚製薬株式会社

医療関連事業
2026年6月5日

IgA腎症治療薬「VOYXACT®(シベプレンリマブ)」
フェーズ3試験における良好な腎機能(eGFR)データを発表
‐ 欧州腎臓学会にて、12カ月にわたる腎機能維持を報告 ‐

  • 米国で迅速承認されている世界初かつ唯一の選択的APRIL阻害薬であるシベプレンリマブは、欧州腎臓学会(ERA)で発表した中間解析結果において、病態進行の主要素(腎機能の維持:Gd-IgA1、タンパク尿及び血尿の減少)に対して、有効性を示す良好な結果が得られた
  • シベプレンリマブ投与後12カ月時点において、ベースラインからの平均eGFR(推算糸球体濾過量)変化は+0.7 mL/min/1.73 m²となり、プラセボ群の−4.8 mL/min/1.73 m²の低下と比較して、5.5 mL/min/1.73 m²の治療効果を示し、腎機能の維持が確認された
  • シベプレンリマブは、今後、24カ月間eGFRの評価データを含むフェーズ3試験の最終結果に基づく正式承認取得に向けて、米国FDAに対する生物製剤承認一部変更申請(sBLA)の段階的提出を開始した

大塚製薬株式会社(本社:東京都、代表取締役社長:井上眞、以下「大塚製薬」)と米国子会社のOtsuka Pharmaceutical Development & Commercialization, Inc.(所在地:米国ニュージャージー州・プリンストン、以下「OPDC」)は、成人のIgA腎症治療薬シベプレンリマブ(一般名)におけるフェーズ3(VISIONARY)試験(NCT05248646)の中間解析における12カ月でのeGFRデータを英国のグラスゴーで開催された欧州腎臓学会(ERA)で発表しましたので、お知らせします。

VISIONARY試験の中間解析結果では、シベプレンリマブの12カ月時点におけるeGFRのベースラインからの平均変化は+0.7 mL/min/1.73 m²であり、プラセボ群の−4.8 mL/min/1.73 m²の低下と比較して、5.5 mL/min/1.73 m²の治療効果を示し、腎機能の維持が確認されました。これはシベプレンリマブがIgA腎症患者における腎機能低下を抑制する可能性を示唆する初期のエビデンスであり、より長期の有効性については、現在進行中のフェーズ3試験でさらに検証される予定です。これらの結果は、選択的A‑Proliferation‑Inducing Ligand(APRIL)阻害という上流の作用機序と腎機能維持という下流の臨床効果との関連を示す臨床的エビデンスであり、シベプレンリマブが長期的な予後の改善に寄与する可能性を裏付けるものです。

オーストラリアのニューサウスウェールズ大学の学務統括責任者であるVlado Perkovic医学博士は、「IgA腎症の患者さんにとって、腎機能低下の進行を遅らせることは極めて重要です。eGFRは腎不全の発症リスクや透析・腎移植の必要性を含む長期予後を予測する最も重要な指標となっています。今回のデータは非常に有望であり、APRILを選択的に阻害することでeGFR低下を抑え、安定化へと導く可能性が示唆されました。これにより患者さんの腎機能の維持および長期的な予後の改善が期待されます」と述べています。

OPDCの上級副社長兼医学責任者John Krausは、「これまでに確認されているGd-IgA1、タンパク尿および血尿の減少に加え、今回の新たなeGFRデータは12カ月にわたる腎機能の維持を示しており、進行リスクのある原発性IgA腎症の成人患者における、臨床アウトカムを有意に改善する可能性を示すシベプレンリマブのエビデンスをさらに強化するものです。また本結果は、抗体を産生する免疫細胞であるB細胞を枯渇させることなくその活性を調節し、病因となるIgA産生を抑制する標的とする、選択的APRIL阻害という治療アプローチの妥当性を一層強めるものとなりました」と述べています。

 現在米国で迅速承認されているシベプレンリマブは、今後、24カ月間eGFRの評価データを含むフェーズ3試験の最終結果に基づく正式承認取得に向けて、米国FDAに対する生物製剤承認一部変更申請(sBLA)の段階的提出を開始しました。

【今回のERAでの発表データについて】

VISIONARY試験(n=320:シベプレンリマブ群n=152、プラセボ群n=168)の事前規定の中間解析では、シベプレンリマブ投与群における、eGFRのベースラインからの平均変化は+0.7(95%信頼区間:−0.9~2.3)mL/min/1.73 m²であったのに対し、プラセボ群では−4.8(95%信頼区間:−6.3~−3.3)mL/min/1.73 m²の低下が認められ、治療差は5.5(95%信頼区間:3.4~7.6)mL/min/1.73 m²となりました。また、12カ月時点において、シベプレンリマブは、年間の腎機能低下を正常な速度(1 mL/min/1.73 m²/年未満)に抑えるという腎臓病治療の国際ガイドライン(KDIGO)の治療目標を満たす効果を示しました。

ベースラインからの変化に基づく解析で示された腎機能維持を裏付けるものとして、eGFR slopeの年間変化率は、12カ月においてシベプレンリマブ群で −3.0(95%信頼区間:−4.6~1.4)mL/min/1.73 m²/年であったのに対し、プラセボ群では −7.6(95%信頼区間:−9.1~6.1)mL/min/1.73 m²/年となり、治療差は4.6(95%信頼区間:2.5~6.8)mL/min/1.73 m²/年を示しました。

シベプレンリマブの全体的な安全性プロファイルはプラセボと同程度であり、主な有害事象は感染症(49%[プラセボ45%])および注射部位反応(24%[プラセボ23%])でした。シベプレンリマブにおける重篤な有害事象(SAE)はプラセボと同程度で、試験において死亡例は報告されませんでした1

【フェーズ3(VISIONARY)試験について】

フェーズ3(VISIONARY)試験は、本疾患における試験として最大となる約530名の成人患者さんを対象とした多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験です1。標準治療(最大耐用量のACE阻害薬またはARB に、必要に応じてSGLT2阻害薬を投与)を受けている成人のIgA腎症患者さんを対象に、シベプレンリマブ400mgを4週ごとに皮下投与し、プラセボ群と比較して評価することを目的としています。この試験は、4週間ごとに400 mgのシベプレンリマブを皮下投与した場合の有効性と安全性をプラセボと比較して評価することを目的としています。主要評価項目は、ベースラインと比較したシベプレンリマブ投与9カ月後の24時間尿におけるuPCR(尿蛋白/クレアチニン比)です。副次評価項目は、約24カ月間にわたるeGFR(推算糸球体濾過量)slopeの年間変化率です。

【IgA(免疫グロブリンA)腎症について】
IgA(アイ・ジー・エー)腎症は、通常は20〜40歳代の成人に比較的多く発症します。本疾患は、免疫複合体が腎臓に沈着することで、進行性の腎機能低下を引き起こし、最終的には末期腎不全にいたる可能性があることから、患者さんに大きな負担をもたらします。腎機能障害の進行を抑制する各種の治療が行われているものの、この疾患の根本原因に対処する治療法には未充足の医療ニーズが存在しています2,3,4,5

【VOYXACT(一般名:シベプレンリマブ)について】

VOYXACTは、IgA腎症の発症と進行において重要な役割を果たしているAPRIL(A Proliferation Inducing Ligand)の作用を選択的に阻害することで、糖鎖欠損IgA1(Gd-IgA1)の産生を抑制します。これにより、IgA腎症の病態形成における4-hitプロセスである ①Gd-IgA1の産生、②Gd-IgA1に対する自己抗体の産生、③免疫複合体の形成、④免疫複合体の糸球体メサンギウムへの沈着を抑制する新たな治療となる可能性があります5-8。4週ごとに自己投与が可能な単回投与のプレフィルドシリンジ(薬剤充てん済み注射器)製剤で、患者さんが在宅投与できる利便性を提供します。VOYXACTは、2025年11月25日に米国FDAより迅速承認を取得しています。

大塚製薬について

大塚製薬は、一人ひとりの可能性に向き合うトータルヘルスケアカンパニーです。"Otsuka-people creating new products for better health worldwide"の企業理念のもと、未充足の医療ニーズに新たな価値を提供する医療関連事業と、科学的根拠をもった独創的な製品やサービスにより日々の健康維持・増進をサポートするニュートラシューティカルズ関連事業を通じて、人々のウェルビーイングの実現に向けて取り組んでいます。 詳細はコーポレートサイト www.otsuka.co.jp をご覧ください。

  • 1. V. Perkovic, H. Trimarchi, V. Tesar, R. Lafayette, M.G. Wong, J. Barratt, Y. Suzuki, A. Liew, H. Zhang, K. Carroll, V. Jha, A. Quevedo, S.H. Han, M. Praga, B. Chacko, M. Sahay, C.K. Cheung, L. Kooienga, M. Walsh, J. Xia, C. Fajardo, L. Shah, J. Hafkin, and D.V. Rizk. Sibeprenlimab in IgA Nephropathy -- Interim Analysis of a Phase 3 Trial. The New England Journal of Medicine. 2025. Nejm.org.
  • 2. Pitcher, D. Braddon, et. al Long-term outcomes in IGA nephropathy. Clinical journal of the American Society of Nephrology: CJASN. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37055195/
  • 3. Lai K. Iga nephropathy. Nature reviews. Disease primers. 2016
  • 4. Cheung, Chee Kay & Boyd, JKF & Feehally, J.. (2012). Evaluation and management of IgA nephropathy. Clinical Medicine. 12. s27-s30. 10.7861/clinmedicine.12-6-s27.
  • 5. Cheung CK, Barratt J, Liew A, Zhang H, Tesar V, Lafayette R. The role of BAFF and April in IGA nephropathy: Pathogenic mechanisms and targeted therapies. Frontiers in nephrology. February 1, 2024.
  • 6. Mathur M, Barratt J, Suzuki Y, et al. Safety, Tolerability, Pharmacokinetics, and Pharmacodynamics of VIS649 (Sibeprenlimab), an APRIL-Neutralizing IgG2 Monoclonal Antibody, in Healthy Volunteers. Kidney Int Rep. 2022;7(5):993-1003.
  • 7. Chang S, Li XK. The Role of Immune Modulation in Pathogenesis of IgA Nephropathy (nih.gov)
  • 8. Mathur M, Barratt J, Chacko B, et al. A Phase 2 Trial of Sibeprenlimab in Immunoglobulin A Nephropathy Patients. NEJM. 2023 https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2305635