ドライアイQ&A
近年、ドライアイの研究はめざましく、新しい検査法や治療薬の開発、メカニズムの解明などが進んでおり、適切な治療を行えばドライアイを改善することは可能です。目の痛みや不快感を覚えたらなるべく早期に眼科を受診するようにしましょう。ドライアイだと思っていたら、実は違う病気であったり、メガネやコンタクトレンズの度数が合っていなかったことが原因だったということもあります。
「ただの疲れ目」と過信したり、自己判断に頼るのは禁物です。また、ドライアイの治療と並行して、普段の生活を見直すことも大切です。室内が乾燥しないよう加湿器を置く、パソコンでの作業は適度に目を休ませる、またはバランスのよい食事と十分な睡眠をとるなど、目に負担をかけないよう配慮しましょう。
市販の点眼薬を使用して症状が改善されないのでしたら、まず眼科でドライアイの検査を受けてください。軽度のドライアイであれば症状に応じた点眼薬での治療となりますが、それでも効果が得られない場合には、涙の排出口となる涙点にプラグで栓をして、涙の流出を抑える治療を行います。また、目の乾燥を防ぐドライアイ用のメガネも各種開発されています。
現代のライフスタイルではテレビやパソコンなどのVDT(Visual Display Terminals)は必要不可欠となり、眼精疲労などは日常的なものとなりつつあります。「一晩寝れば回復するだろう」と軽く考えがちですが、ドライアイを放っておくと、視力が低下するだけでなく、頭痛や肩こり、腰痛など全身の不調をきたすこともあります。
さらに、シェーグレン症候群やスティーブンス・ジョンソン症候群といった全身性疾患や、糖尿病網膜症や緑内障、白内障など、失明にもつながりかねない重篤な疾患が背後に隠れている可能性もあります。ドライアイの自覚症状には、個人差があり、判別が難しい疾患です。早期発見、早期治療のためにも定期的な眼科検診をおすすめします。
最近ではコンタクトレンズをしたままでも点眼が可能な点眼薬が増えてきました。一般的に、酸素透過性のハードレンズとソフトレンズは外して使用するようにいわれています。その理由として、点眼薬には防腐剤が含まれているものが多く、その防腐剤が酸素の透過性を妨げることがあげられています。
また、点眼薬に含まれる薬剤が付着しレンズが変質する可能性もあります。点眼薬やレンズの種類、つける頻度にもよるので、医師や薬剤師にご相談下さい。
ドライアイの症状を引き起こす病気はいろいろあります。
涙液の水層に異常を起こすものには、シェーグレン症候群があります。ムチン層に異常を起こすものとしては、眼類天疱瘡、スティーブンス・ジョンソン症候群、アレルギー性結膜炎などが挙げられます。また、油層に異常を起こすものとしては、マイボーム腺機能不全があります。
さらに、糖尿病も涙の成分の変化が原因で、目の表面の知覚神経が鈍くなってしまい、まばたきの回数が減ることにより、ドライアイを引き起こすと考えられています。これらの病気は、それぞれ原因や治療法が異なります。中には重篤な全身症状を伴う疾患もあるので、チェックシートによる自己診断でドライアイが疑われたら、早めに眼科を受診して検査を受けましょう。
アイメイクを強調する化粧の流行により、目のトラブルが増えています。
目の粘膜は非常にデリケートなので、アイメイクをする際には注意が必要です。アイラインやマスカラによって、目の縁にあるマイボーム腺の開口部がふさがれてしまうと、涙の表面を覆う油が分泌できなくなるため、涙が蒸発してドライアイになることがあります。
最近では、まつ毛パーマやまつ毛エクステンション、アートメイクといった、刺激性の薬剤や接着剤、色素などを用いた様々な美容法が行われています。これらは、ドライアイだけでなく目の炎症や角膜障害などのトラブルを引き起こし、目の健康を損なう恐れがあることを十分に理解しておきましょう。
ドライアイの一般的な検査(シルマーテスト、BUT測定テスト、生体染色検査)は、いずれも痛みを感じることはほとんどありません。一連の検査を行っても短時間で終了するので、気軽に検査を受けてください。
レーシック手術では角膜内の神経が切断されるため、術後は一時的に涙の分泌量が低下したり、まばたきが減ったりして、ドライアイの症状が起こるのです。そのため、目の乾燥感や疲労感などの自覚症状が出たり、視力が低下したりします。術後は、人工涙液の点眼を継続するなど、専門医の指示に従って術後ドライアイ対策をきちんと行うことが大切です。
花粉症によるアレルギー性結膜炎でみられる目のかゆみや充血、異物感は、ドライアイでもみられる症状です。花粉症の治療で目の不調が改善されない場合には、一度ドライアイの眼科検診に行かれることをおすすめします。
また、アレルギー性結膜炎とドライアイは併発していることがあり、ドライアイで涙の量が減少すると、花粉を洗い流すことができずに目の炎症をもたらすこともあります。さらに角膜に傷がついてしまうとますますドライアイが悪化してしまいます。
必須脂肪酸のn-3系脂肪酸(オメガ3)の摂取が多い人ほどドライアイのリスクが減るという報告があります。代表的なn-3系脂肪酸には、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、α-リノレン酸(ALA)などがあり、これらはすでに脂質異常症や心血管疾患の予防効果が認められています。EPAやDHAを多く含む食品には、青魚、サケ、マグロなどがあります。サプリメントも様々販売されており、即効性は期待できませんが、気軽に始めることができます。しかし、n-3脂肪酸を過剰に摂取すると出血時間延長などの副作用もあるので、摂り過ぎには十分注意しましょう。
涙には、常に目を潤している基礎分泌性の涙や、目にゴミが入った時など刺激を受けて出る反射性の涙のほか、うれしい、悲しいといった感情が引き金となって流れる情動性の涙があります。
この情動性の涙は自律神経の働きが関係しています。感情が高まると大脳の前頭前野が働いて一時的に自律神経の活動が促され、涙腺から大量の涙が分泌されて目から溢れ出るのです。この情動性の涙は人間特有のもので、ほかの動物にはみられません。
ムチンとは、粘膜細胞から分泌される粘り気を持つ物質であり、粘液を構成する主要な成分の一つです。ムチンは人の身体の中いたるところに分布しますが、例えば胃粘膜においては胃酸からの防御の役割をし、目の表面ではムチン層を形成して目の表面を保護するとともに、涙液の安定性を保つ働きがあります。
また、組織が傷ついた場合、ムチンはその傷を保護し、さらにその修復を促進します。
粘液質であるムチンは、涙液の主成分である水分を角膜に均等に定着させる役目を担っています。
角膜の細胞は本来、水をはじく性質がありますが、糖とタンパク質からなるムチン(膜型ムチン)の作用によって角膜と水分をなじみやすくしています。このムチンという土台がなければ、涙が目の表面に留まれず流れ落ちてしまいます。
生活環境の変化(エアコン、パソコンの普及など)により、日本と同様、海外においてもドライアイの患者さんは増えていることが考えられますが、対象や調査方法が異なるため、国別に有病率を比較した詳細な報告はありません。ただし、日本を含むアジア圏でのドライアイの有病率は、欧州、北米と比べ高いという報告があります。
動物は全身を体毛で覆われているので、人間と比べれば目も保護されやすいといえますが、ドライアイを発症しているペットの犬や猫などがいます。人間の場合、ドライアイの原因となるのは乾燥しがちな室内環境や目の酷使などですが、犬の場合では免疫システムの異常で涙腺の細胞が破壊されることによるものが多いようです。ほかにも神経系の障害や加齢、先天的な涙腺の欠如など様々な要因が考えられます。症状としては粘り気のある目やにが大量に出ることなどがみられます。
顔を上に向け、指で下まぶたを軽く下に引きます。点眼薬の容器が目やまぶたにあたらないようにして、下まぶたに点眼します。点眼したら、薬液が涙点から流れないように目頭の少し下のあたりを軽く押さえ、そのまましばらく目を閉じていましょう。
薬液を行き渡らせようとしてまばたきを何度もするのは誤りです。薬液が涙といっしょに涙点からのどのほうへ流れ出てしまい、口の中に苦みを感じます。2種類以上の点眼薬を使用する場合は、5分ほど間隔をあけてください。また、点眼前によく手を洗い、開封後は容器の口に触れないようにするなど清潔に保つことも忘れずに。
ドライアイ患者さんの増加に伴ってドライアイ用の市販点眼薬も豊富になってきています。手軽に購入できて便利ですが、やはり眼科を受診して、医師による適切な診断のもと、症状にあった点眼薬で治療することをおすすめします。
疲れ目、乾き目など自己判断で市販薬を常用すると、かえって症状を悪化させたり、慢性化させたりするおそれがあります。また、市販の点眼薬には防腐剤が含まれているものが多く、ドライアイ患者さんには特に注意が必要です。目が乾くからといって頻繁に点眼薬をさすと、防腐剤が目に残ってさらに角膜を傷つけてしまうこともあります。
コンタクトレンズの使用はドライアイを引き起こす要因となり、さらにドライアイを重症化させてしまうという悪循環をもたらすおそれがあります。どうしてもコンタクトレンズを使用したいという場合には、ソフトレンズよりもハードレンズを選んだほうがよいでしょう。
ソフトレンズは水分を多く含む材質のため、長期にわたって使用しているとレンズの水分が失われていき、眼球表面の涙の水分を吸収してしまいます。
ハードレンズは水分を含まないので、ソフトレンズよりは涙の蒸発が少ないといえます。また、ハードレンズは角膜よりもサイズが小さく、瞬きをするたびにレンズが角膜の上下で動くので、涙液交換の効率が優れていますが、角膜より大きいソフトレンズでは涙液が交換されにくいのです。