涙の働きと構造
涙の働き
まばたきをすると、涙が一定の厚みで目の表面を覆う状態がしばらく維持されます。これを涙の安定性といいます。
涙は、単に目を潤しているだけではなく、目の機能を正常に保つために大切な働きをしています。
- 目の乾燥を防ぐ
涙は目の表面を覆うことで乾燥を防ぐとともに、外界の刺激から目を保護しています。
- 目に酸素や栄養を供給する
目の表面には血管がないため、涙によって目の表面の細胞に酸素や栄養が運ばれています。
- 感染を防ぐ
目に入った異物は涙によって洗い流されます。また、涙にはリゾチームという殺菌作用をもった物質が含まれており、微生物の侵入や感染を予防する働きをします。
- 目の表面の傷を治す
涙には目の表面の傷を治癒する成分が含まれています。
- 目の表面を滑らかにする
目の表面を涙が潤して滑らかにすることで、光が正しく屈折して物を鮮明に見ることができるのです。
涙の二層構造
目の表面を覆っている涙が正常に働くためには、その構造の保持が大切であることがわかってきました。涙は外側から、油層、液層の二層構造をしています。
油層
まぶたの縁にあるマイボーム腺から分泌される油の層。外側を覆うことで、涙が蒸発するのを防いでいます。加齢や炎症のためにマイボーム腺の働きが低下すると、油の分泌が減ったり、成分が変化して油が固くなり、マイボーム腺の開口部が詰まったりします。すると、涙の安定性が低下してドライアイの原因となります。このような異常は「マイボーム腺機能不全」と呼ばれ、高齢の患者さんに多くみられます。
液層
涙の大部分(95%)を占める層で、タンパク質など様々な成分を含んでおり、角膜への栄養補給や感染予防、傷の治癒など、涙の重要な働きを担っています。上まぶたの裏側にある涙腺から分泌されます。また、目の表面の「ゴブレット細胞」から分泌される粘液のムチン(分泌型ムチン)は、涙が目の表面を均一に分布するのを助けています。最近の研究で、このムチンが涙の安定性に重要な役割を果たしていることがわかってきました。