心不全の診断・評価法とは?
心不全の診断
心不全の重症度を評価するためには、悪くなった心臓が全身に及ぼす影響度を評価することと同時に、心臓そのものの機能・構造の異常を評価することが大切です。
構造機能異常の評価はほとんど心エコーで可能ですが、より精密に評価するためにBNP濃度測定や心臓MRIを行うことがあります。
また、心臓・肺や筋肉の働きを調べるために、その人がどれくらいまでの運動に耐えられるかの限界を指す運動耐容能を自覚症状や6分間歩行、CPX(心肺運動負荷試験)から評価します。
心エコー
心不全の原因診断や重症度診断に最も有用な検査です。心エコーで得られる情報*は多岐にわたります。
- *左室機能・サイズ、右室機能・サイズ、左房容積、収縮能・拡張能、心膜疾患・心嚢液の有無、弁逆流・弁狭窄、推定右房圧、推定肺動脈収縮期圧、推定左房圧、非同期
BNP濃度測定
BNPとは、心臓を守るために心室から分泌されるホルモンで、1988年に日本で発見されました。
心臓の機能が低下して心臓への負担が大きいほど多く分泌され、数値が高くなります。
BNPの基準値は18.4pg/ml以下です。おおよそ35pg/ml以下であれば、心不全の可能性は低いが経過観察が必要です。
BNP値が35~100pg/mlは前心不全または心不全の可能性がありますので、循環器専門医の受診が必要です。
BNP値が100pg/ml以上に上昇すると心不全の可能性が高くなります。
NT-proBNP測定も同じ目的で使用されますが、BNP値よりもNT-proBNP値の方が4~5倍高い値を示しますので、検査値を確認する際にはどちらの検査であるかを注意しましょう。
心不全の発症と進行ステージ
心不全はA~Dの4つのステージに分類されます。ステージAは「心不全リスク」がある状態(高血圧、糖尿病、動脈硬化など)、ステージBは「前心不全」と呼ばれており、心不全を発症する前段階です。ステージが進行すればするほど、より重症となるため、生活習慣の見直しや基礎疾患の治療を行い、心不全(ステージC)を発症させないことが重要です。
また、心不全の重症度はNYHA分類と呼ばれる、自覚症状の程度により評価されます。
- ※ステージ分類は「不可逆的」と言われており、ステージが進行すればもとに戻ることはありません。
ステージが進行すればするほど、より重症になります。
NYHA分類は「可逆性」、すなわち治療をすることで、NYHA分類は前後します。
Bozkurt B, et al.:, EurJ Heart Fail. 23(3):352-380,2021より改変
NYHA分類とは
運動耐容能を示す指標として、NYHA分類〈New York HeartAssociation functional classification〉による心機能分類が広く用いられています。
これは、色んな身体活動により生じる自覚症状に基づいて判定されます。
NYHA分類は「可逆性」、すなわち治療をすることで、NYHA分類は前後します。
ACC/AHAステージ分類とNYHA心機能分類との対比
ACC/AHAステージ分類
2001年にACC/AHA(American Heart Association / American College of Cardiology)の心不全に関するガイドラインから登場したステージ分類です。
ACC/AHA分類は通常「不可逆的」と言われており、ステージが進行すれば決してもとに戻ることはありません。
ステージが進行すればするほど、心不全はより重症になります。