BCAA含有飲料を用いた主な研究成果

研究成果一覧

分岐鎖アミノ酸飲料の単回摂取に対する血中分岐鎖アミノ酸応答

濱田広一郎、木場孝繁、桜井政夫、松元圭太郎、樋口智子、今泉記代子、早瀬秀樹、上野裕文
日本臨床栄養学会雑誌 2005; 27: 1-10

目的:
単回摂取で血中BCAA濃度を十分に増大できるBCAA量を決定すること。
方法:
健常成人男性8名を対象に、6段階のBCAA含有飲料およびプラセボ飲料を用いた二重盲検クロスオーバー比較試験を実施した。試験1では、BCAA 2000mg、1000mg、500mgを含むBCAA含有飲料およびプラセボ飲料500mlを単回摂取させた後の血中BCAA濃度を測定した。
クロスオーバー比較試験:一人の被験者が、各条件を異なる順番で実施し結果を比較する試験
結果:
BCAA含有飲料摂取後に血漿総BCAA濃度は用量依存的に上昇し、そのピークは摂取30分後であった。BCAA2000mgまたは1000mg含有飲料摂取において、プラセボ飲料摂取時に比べて血漿総BCAA濃度は有意に高く、BCAA2000mg含有飲料では、摂取120分後でも摂取前値に対して有意に高く維持されていた。一方、BCAA1000mgまたは500mg含有飲料では血漿総BCAA濃度が摂取前値に対して有意に高い値を示したのは、それぞれ摂取45分後までと30分後までであった。
考察:
BCAAを2000mg以上含有する試験飲料摂取は、500mgや1000mg含有飲料に比べて、1)血中BCAA濃度上昇をより大きくし、2)上昇した血中BCAA濃度をより長時間維持した。従って、生理的効果をより高く期待できるBCAAの摂取量は、2000mg以上であることが推察された。

Branched-chain amino acids and arginine supplementation attenuates skeletal muscle proteolysis induced by moderate exercise in young individuals

Matsumoto K, Mizuno M, Mizuno T, Dilling-Hansen B, Lahoz A, Bertelsen V, Münster H, Jordening H, Hamada K, Doi T
Int. J. Sports Med 2007; 28: 531-538

目的:
BCAA2000mg程度の単回摂取での中等度運動中の筋タンパク質分解への影響を検討すること。
方法:
運動習慣のない健常成人男性8名を対象に、BCAA含有飲料(BCAA 2g/ 500mL) または等カロリープラセボ飲料摂取の2条件にて、二重盲検クロスオーバー比較試験を実施した。中等度の自転車こぎ運動(50%Max強度:126±13W)を3セット、合計1時間実施し、運動負荷中に試験飲料を単回摂取させた。運動開始前と運動中10分おきに橈骨動脈と大腿静脈から採血を行い、大腿動脈の血流量を超音波ドップラー法※1にて測定した。動静脈格差法※2により筋タンパク質分解の指標であるフェニルアラニン(Phe)バランス※3を算出した。
※1 超音波ドップラー法:体内で移動している対象物に超音波をあて、その移動速度を測定する方法
※2 動静脈格差法:動静脈からの同時採血により測定される各アミノ酸濃度と動脈血流量の計測値を用いて、活動筋群における各アミノ酸の取り込みと放出とのバランスを算出する。[(動脈血濃度-静脈血濃度)×血流量]の計算式で算出する。
※3 フェニルアラニン(Phe)バランス:Pheは筋肉ではタンパク質合成に利用されて筋タンパク質に取り込まれるか、タンパク質分解によって筋タンパク質から放出されるかの代謝経路しかない。このため、筋肉へのPheの取込は正味の筋タンパク質の合成状態を、筋肉からのPheの放出は正味の筋タンパク質の分解状態を反映する。
結果:
運動中のBCAA2000mg単回摂取により、血中BCAA濃度は有意に増加し、増加したBCAAが骨格筋に取り込まれていたが、プラセボでは飲料摂取時の血中BCAA濃度および骨格筋へのBCAA動態に変化は見られなかった。運動中の骨格筋からのPhe放出は、プラセボ飲料摂取時で運動前と比べて有意に増加していたが、BCAA含有飲料摂取で有意に抑制されていた。
考察:
運動中のBCAA含有飲料の摂取は、活動筋におけるBCAAの取り込みを増大し、中等度運動実施時の筋タンパク質分解の抑制に有効であることが示唆された。

Branched-chain amino acids supplementation attenuates the accumulation of blood lactate dehydrogenase during distance running

Koba T, Hamada K, Sakurai M, Matsumoto K, Hayase H, Imaizumi K, Tsujimoto H, Mitsuzono R
J. Sport Med. Phys. Fit 2007; 47: 316-322

目的:
BCAA含有飲料摂取が、長距離走時の筋損傷に及ぼす影響を検討すること。
方法:
男子陸上長距離選手8名を対象に、BCAA含有飲料(BCAA 2g/500mL)または等カロリープラセボ飲料摂取の2条件にて、二重盲検クロスオーバー比較試験を実施した。大学陸上競技部夏季合宿中に行われた25km走において、各被験飲料を走行開始30分前に250mL摂取させ、走行中は、5km毎に自由摂取させた。また、被験者には25km走の3日前から各被験飲料を1日3回500mLずつ計1500mL (BCAA 6g/日) それぞれ摂取させた。25km走の前後に採血を行い、アミノ酸濃度および筋損傷の指標である乳酸脱水素酵素(LDH)濃度を評価した。
結果:
25km走行時の被験物摂取量に群間の差はなかった(BCAA含有飲料:591±188mL vs プラセボ飲料:516±169mL)。25km走行中の血中BCAA濃度はBCAA含有飲料摂取時では維持されたが、プラセボ摂取時は低下傾向にあった。両条件とも25km走行により血中のLDH濃度は上昇したが、その上昇程度はBCAA含有飲料摂取時でプラセボ飲料摂取時に比べ有意に低かった。
考察:
長距離走行時のBCAA飲料摂取は血中BCAA濃度の低下を抑制し、筋損傷を軽減する可能性が示唆された。

Branched-chain amino acid supplementation attenuates muscle soreness, muscle damage and inflammation during an intensive training program

Matsumoto K, Koba T, Hamada K, Sakurai M, Higuchi T, Miyata H
J. Sports. Med. Phys. Fitness 2009; 49: 424-431

目的:
高強度運動プログラム中のBCAA含有飲料の継続摂取が、運動による筋肉痛、疲労感および筋損傷、炎症に及ぼす影響を検討すること。
方法:
男女陸上長距離選手12名を対象に、BCAA含有飲料(BCAA 4g/ 500mL)または等カロリープラセボ飲料摂取の2条件にて、二重盲検クロスオーバー比較試験を実施した。3日間の高強度トレーニングプログラムを3週間の間隔で2回実施した。トレーニング期間中毎日、BCAA含有飲料もしくはプラセボ飲料を2500ml摂取させ、トレーニング中の全身の筋肉痛と疲労感をVAS法により測定した。また、トレーニング前および3日間のトレーニング後に採血を行い、筋損傷の指標である血中クレアチンキナーゼ(CK)および乳酸脱水素酵素(LDH)と、炎症の指標である血清顆粒球エラスターゼを測定した。
VAS法:Visual analog scale法の略。両端に対照的な項目を記載した10cmの横線に、その時の気分(感じ方)応じて1本縦線を書き込み、左端からの長さを測定することで主観を数値化する方法
結果:
トレーニング前に比べて、トレーニング後でプラセボ飲料摂取、BCAA含有飲料摂取ともに筋肉痛の増加がみられたが、プラセボ飲料摂取時に比べBCAA含有飲料摂取時で筋痛の発現が有意に抑制された。また、疲労感は、プラセボ飲料摂取時に比べBCAA含有飲料摂取時で有意に抑制された。血中CKおよびLDH活性は、プラセボ飲料摂取時に比べBCAA含有飲料摂取時で有意に抑制された。血清顆粒球エラスターゼは、プラセボ飲料摂取時においてのみトレーニング後の値が有意に高く、群間比較の結果、プラセボ飲料摂取時に比べBCAA含有飲料摂取時において有意に低い値が認められた。
考察:
BCAA含有飲料を摂取することにより、高強度トレーニングプログラム中の筋肉痛や疲労感が軽減されると同時に、筋損傷や炎症も軽減していた。これらの結果、合宿等の高強度運動が連続する場合の、アスリートの体調維持にBCAA含有飲料は有用である可能性が示唆された。

Branched-chain amino acid supplementation increases the lactate threshold during an incremental exercise test in trained individuals

Matsumoto K, Koba T, Hamada K, Tsujimoto H, Mitsuzono R
J. Nutr. Sci. Vitaminol 2009; 55: 52-58

目的:
BCAA含有飲料の摂取が、乳酸性作業閾値(LT)に及ぼす影響を検討すること。
方法:
運動鍛錬者8名を対象に、BCAA含有飲料(BCAA 2g/ 500mL)または等カロリープラセボ飲料摂取の2条件にて、二重盲検クロスオーバー比較試験を実施した。BCAA含有飲料もしくは、プラセボ飲料を事前に6日間毎日3本摂取させ(BCAA 6g/日)、7日目に自転車こぎ運動による漸増運動負荷試験を行った。漸増運動負荷試験の15分前にBCAA含有飲料もしくはプラセボ飲料を1本摂取させ、摂取前および運動中に経時的に採血ならびに採気し、血中の乳酸、アミノ酸濃度および酸素摂取量を測定した。また、血中乳酸濃度と酸素摂取量の変動より持久性運動能力の指標であるLTおよびOBLA(Onset of blood lactate accumulation:乳酸4mmol/L相当)を算出した。
漸増運動負荷試験:一定の負荷時間と休息時間を繰り返しながら負荷を徐々に上げていく試験
結果:
運動中の血中BCAA濃度は、BCAA含有飲料摂取時においてプラセボ摂取時に比べ高値を示した。LTポイントおよびOBLAポイントでの酸素摂取量は、プラセボ摂取に比べBCAA含有飲料摂取で有意に高かった。
考察:
BCAA含有飲料の継続摂取により持久性運動能力の指標であるLTおよびOBLAが延長したことから、持久力が向上する可能性が示唆された。

Effects of amino acid-carbohydrate drink on exercise performance after consecutive-day exercise bouts

Skillen RA, Testa M, Applegate EA, Heiden EA, Fascetti AJ, Casazza GA,
Int. J. Sport Nutr. Exer. Met 2008; 18: 473-492

目的:
BCAA含有飲料の継続摂取が、連日運動時の運動パフォーマンスに及ぼす影響を検討すること。
方法:
男性自転車選手12名を対象に、BCAA含有飲料(BCAA 4g/ 500mL)または等カロリープラセボ飲料摂取の2条件にて、二重盲検クロスオーバー比較試験を実施した。2週間BCAA含有飲料を毎日摂取させ、摂取開始1、15および16日目に運動パフォーマンステストとして自転車こぎ運動 (90分の75%VO2peak負荷後、85%VO2peak強度で疲労困憊まで)を実施した。パフォーマンスの指標として運動の継続時間を、筋疲労の指標として垂直跳びを、また筋損傷の指標となるCK活性も測定した。摂取開始1日目ではBCAA含有飲料単回摂取の効果、15日目では継続摂取(2週間)の効果、16日目においては連日運動時の効果を評価した。
結果:
運動パフォーマンステストの結果、プラセボ摂取時では連続2日間の運動によって運動持続時間が有意に低下したのに対し、BCAA含有飲料摂取時ではその低下がみられなかった。筋疲労の指標である垂直跳びの変化においても、プラセボ飲料摂取時では記録の有意な低下が認められたが、BCAA含有飲料摂取時ではその低下がみられず、BCAA含有飲料摂取時でプラセボ飲料摂取時に比べて記録の低下を有意に抑制した。さらに、CK活性はBCAA含有飲料摂取時でプラセボ飲料摂取時に比べて、連続2日間の運動による低下が有意に抑制された。
考察:
BCAA含有飲料の継続摂取により、連日運動時の運動パフォーマンスが維持され、筋疲労や筋損傷が軽減していた。これらの結果、継続的にBCAAを摂取することは、日常のトレーニングや試合が続く競技スポーツ等における運動パフォーマンスおよびコンディションの維持に有用であることが示唆された。