パリで〝入賞〟目指す田澤廉
どんな状況でも外さない日本長距離界の至宝
田澤 廉 選手(陸上)
國學院大學陸上競技部(駅伝)
コンディショニングは、重要なレースの直前にだけ意識すればいいものではない。日頃から徹底することで、大一番を迎えた際に最大限のパフォーマンスを発揮できる。その意味で前田監督は、「重要なのは準備、練習、リカバリー。1つの戦いの後は、次の戦いに向けてそれを繰り返していく」と説き、「(2月、3月は)良い周期に来ているので、トラックシーズンも勢いを止めずに行きたい」と力強く語る。
選手たちもそれぞれに自分がやるべきことを理解している。平林は主将として、「自分たちの走る環境を自分たちで作ることを大事にしています。引き続き、みんなが意欲を持って練習やレースに臨めるようにしたい」と語り、エースとしては「正月の駅伝で絶対に優勝したいので、前回走った2区だけでなく、チーム状況次第では、どの区間でも区間賞を取れるような準備をしていきたいです」と力を込める。
山本は昨季、全日本大学駅伝後に右大腿骨を疲労骨折し、正月の駅伝を走れなかったが、現在はケガもすっかり完治した。大学ラストイヤーに懸ける熱い思いを胸に秘め、日々のトレーニングに励んでいる。
「トラックシーズンは関東インカレ5000mでの優勝を目指しています。駅伝シーズンはどの区間を任されても区間賞を取って、チームに勢いをつけられるようにがんばっていきたいです」
来年度のエース候補として期待がかかる青木は、今季の目標を「10000mで27分50秒を切って平林さんの記録(27分55秒15=國學院大記録)を超えることと、5000mでは13分30秒を切ること。関東インカレは10000mで勝負して優勝したいです」と話し、「正月の駅伝は山の区間以外はどこでも行けるようにしたいです。それができればチームに厚みが出てくる」と前を見据えた。
とはいえ、前田監督は現状のままで〝てっぺん〟に届くとは考えていない。特に正月決戦で頂点に立つには、これから約半年間のレベルアップが欠かせないという。
「主力の5人ぐらいが絶対的な存在になることと、チーム全体も底上げして、常に15~16人が競う選手層を作ること。あとは〝山〟が課題になってきます」
指揮官が軸としたのは、平林や山本、青木の他、上原や高山、辻原、田中愛睦(2年)らで、そこに有力な新入生も加わった。学生駅伝の2強といわれるチームに引けを取らない戦力が揃いつつあり、期待感は膨らむばかりだ。前田監督の口からはポジティブな言葉が次々と飛び出てくる。
「勝つことでチームの未来が変わってくると思います。最大目標は正月ですが、日本一決定戦の全日本も十分チャンスがありますし、出雲は夏にならないと何とも言えませんが、今季は駅伝で3つとも狙えるところにはいると思っています。だからきちんと宣言して、選手たちにも意識づけをさせて臨ませたいという作戦です」
秋の駅伝シーズン、充実の戦力を有する國學院大が最高のパフォーマンスを発揮した時、学生駅伝における新たな歴史の1ページが刻まれることになる。
文/小野哲史、撮影/船越陽一郎
この記事は、月刊陸上競技2024年5月号に掲載された内容です。
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