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INTERVIEW

インタビュー

高校日本一35度 
スピードスケートNo.1
名門校は、なぜこんなに
強いのか

白樺学園高校(スピードスケート)

全国高校選手権で35度目の優勝を飾った白樺学園高校スピードスケート部男子
【写真提供:白樺学園高校スピードスケート部】

ー 全国高校選手権で35度目の優勝、その裏にあった「自分たちでやる練習」

ユースオリンピックの直後、地元・帯広で行われた全国高校選手権。蟻戸選手と山本選手を擁する白樺学園の男子は7種目で大会新記録を樹立し、チームパシュートでは高校新記録を達成。35度目の総合優勝を4連覇で飾った。

「4連覇はチームの目標だった。そこが達成できたのは良かった」と安堵した和田監督に満足感はないが、今回の優勝には特別な思いがあった。13年に就任以来、最初の3年間はなかなか勝てなかった。陸上も氷上のトレーニングもみっちりとやらせ、選手を追い込んだのに結果だけがついてこない。しかし、1人の選手が指導者の考えを180度、変えることになる。

目下、北京五輪候補の久保向希選手が在籍していた当時、「怪物」と評されるほどの逸材だった。しかし、3年生の11月のレース中にアキレス腱を負傷。しばらくは練習ができない分、コーチとして後輩たちを指導させると、変化があった。「人に教えるうちにだんだんスケートを理解し始めたんです。監督に言われたことをやるだけの練習ではしっくり来なかったことも(本人が)『なんとなくわかってきた』と」と指揮官は言う。

1か月半、ほぼ練習ができず、足は腕よりも細くなり、筋肉が落ちた。だが、1月の高校選手権では1000メートルだけという約束で出場させた得意種目で優勝を果たした。

選手が練習の意味を納得し、理解することで生まれる成長を初めて実感した出来事。「結局、練習量だけを求めても、最後は頭と心が最優先じゃないと、結果は出ないなと感じた。だから、練習においても子供たちに余裕を持たせながらやろう、と」

「やらされる練習」ではなく「やる練習」の原点はここにある。この2、3年は選手に口を出すことが減った。特に、今シーズンは本業の農家を優先し、11、12月は氷上でのみ指導し、陸上トレーニングには顔を出さず、渡したメニューの実践は選手たちに一任した。

「『監督いないから今日、休もうぜ』でもいいんです。サボった結果、負けても責任を取るのは監督。『来ていない監督が悪いだけだから』と選手たちに伝え、2か月、自分たちだけでやらせました。でも、顧問がたまに覗きに行くと『どの部よりも一番やっている』と。ただ強いチームじゃなく、指導者がいなくても勝てるチームになったなと。成長を感じました」

白樺学園の強さについて「監督の指導の下、選手が考えて練習すること」(蟻戸選手)、「監督のアドバイスを一人一人が理解し、考えて練習できるところ」(山本選手)と選手自身も実感している。

年を追うごとに成熟してきた白樺学園。4月から蟻戸選手は大学に進学する。将来の夢について「北京五輪で5000メートル出場、世界選手権でメダル獲得です」といえば、最上級生としてチームを牽引する山本選手も「オリンピックで金メダルを獲得することです」と語り、胸に描く目標は大きい。

そして、常勝軍団を作り上げた和田監督は「エースだけ強ければいいというチームじゃ勝てない」と力説する。

「山本は強い選手だけど、同じ距離でほかに4人の選手がいたら、彼らにアドバイスして自分のレベルまで引き上げないといけません。強い選手が5人で行うと質の高いトレーニングになるので、山本自身にとっても更にレベルアップできるトレーニング環境となり、もっと上にいける。

毎年、その繰り返し。3年生が抜けたら今度は2年生が3年生の、1年生が2年生の役割をして、新しい1年生をどこまで1年間で引き上げられるか。周りを引き上げた分だけ、自分も伸びる。それが、うちの特徴。だから、強い選手が安定して出てくるのかな」

心と体の強さに裏打ちされたスピードスケート界の名門校は、これからも速く、強く、氷の上で輝き続ける。

この記事は、2020年4月15日、THE ANSWERに掲載された内容です。