日常生活における脱水とは?

低湿度環境における
鼻腔粘液線毛輸送機能の低下を抑制

大塚製薬株式会社 佐賀栄養製品研究所

背景と目的

低湿度環境下では、呼気や皮膚から、身体の水分がより多く失われることが知られています。また、風邪などの上気道の感染予防に重要な役割を果たす機能のひとつである鼻腔粘液線毛輸送機能が低下することも報告されています。本研究では、低湿度環境で水分を摂取した際の鼻腔粘液線毛輸送機能に与える影響を検証し、イオン飲料の有用性を明らかにすることを目的に、本研究を実施しました。

方法

健常成人男性14名を対象として、室温23℃、湿度10%の人工気象室に入室させ、4時間経過までの鼻腔粘液線毛輸送機能の変化を、イオン飲料を摂取する、ミネラルウォーターを摂取する、全く摂取しない、の3条件で比較試験を行いました。鼻腔粘液線毛輸送機能の測定には、サッカリンテストを用いました。これは、人工甘味料であるサッカリン顆粒を鼻の粘膜に付着させ、溶け出したサッカリンが線毛運動によって輸送され、咽頭で甘さとして感じるまでの時間(サッカリンタイム)を測定します。サッカリンタイムが長くなることが、鼻腔の粘液線毛輸送機能の低下の指標となります(右図)。

結果

鼻腔粘液線毛輸送機能の経時変化
ソース:Auris Nasus Larynx(2012) 39:48‒52より作成

人工気象室に入室して2時間後に3条件で比較した結果、イオン飲料を摂取した場合は、サッカリンタイムの変化率は10%以下であり、何も摂取しなかった場合の約40%と比べて、鼻腔粘液輸送機能の低下が有意に抑制されることを確認しました。また、ミネラルウォーターを摂取した場合は、サッカリンタイムの変化率は約30%でしたが、何も摂取しなかった場合と比べて、有意な差は認められませんでした(右図)。

結論

これらの結果から、イオン飲料による適切な水分摂取で身体の水分を保つことが、身体の防御機能のひとつである鼻腔粘液線毛輸送機能を維持するために重要であると示唆されました。