冬のカラダは水分不足
私たちのカラダは普通に生活していても、1日に約2.5リットルもの水分を失っています。その中には、感じることのないまま皮膚や粘膜、あるいは呼気から水分が失われる「不感蒸泄」と呼ばれるものがあります。不感蒸泄は、安静時で1日約900mlと言われていますが(下図)、気温が低く、空気の乾燥した冬の環境では不感蒸泄によって失われる水分量が増えることが報告されています。
下図は、部屋の湿度が不感蒸泄にどう影響するのかを示したものです。湿度が50%、30%、10%と低くなるほど失う水分量が多くなっていることが見て取れます。
汗をあまりかかない冬は水分を失っている自覚が少なく、夏場に比べ水分摂取の機会が減ることで、脱水を引き起こす可能性があります。また、寒いからと暖房機器を使用したまま寝ると、部屋の湿度がさらに下がり、不感蒸泄量も増えると考えられます。低湿度の環境においては、カラダが乾きやすいことを心にとめておきましょう。
知らず知らずの乾燥
私たちが生活するのに快適な湿度は40~60%と言われています。冬の湿度はおおよそ50%前後ですが、湿度は1日の中でも変化し、最小湿度は10%~20%にもなります。
なぜ冬はこれほど乾燥するのでしょうか。そもそも湿度とは空気中に含まれる水蒸気の量(飽和水蒸気量)のことで、空気は温度が高いと含むことのできる水蒸気の量は増え、温度が低くなると含む量は少なくなります。つまり、気温の低い冬は空気中の水蒸気量が少ないため、必然的に乾燥してしまいます。
暖房機器の使用も乾燥に関係しています。特に顕著なのがエアコンで、エアコンは空気を直接温めて温度を上げることから、加湿をしなければ室温だけが上り、相対的に湿度が低下して、さらなる乾燥を引き起こします。密閉性の高い近年の住環境も乾燥に拍車をかけていると言えます。
このように、冬の暮らしは気づかぬうちに乾燥が進んでいます。加湿器などを利用して湿度をコントロールするとともにカラダの渇きを防ぎましょう。
冬の乾燥には日本の地形が大きく影響しています。冬は偏西風によってシベリア方面から非常に冷たく湿った寒気団が日本海側に降りてきて、たくさんの雪を降らせます。その後、水分の抜けた冷たい空気だけが山を越えて太平洋側に流れ込むため、特に太平洋側は乾燥するのです。左図は東京の平均気温と湿度、最小湿度をまとめています。秋から冬にかけて最小湿度は平均を大きく下回り、厳しい乾燥状態にあることがわかります。また、1日の時間帯別に見ると、晴れた日には日中が最も乾燥し、10%近くまで湿度が低下する場合もあり注意が必要です(右図)。
冬は、低温と乾燥した環境から、体調を崩しやすい季節です。また新型コロナウイルスやインフルエンザの流行が心配される中、「3つのキープ」を意識して、健康に過ごしましょう。
夏に比べ発汗量が極端に少なくなる冬は、ノドの渇きを感じにくく、飲水量も減少します。加えて、マスクの着用で口やノドの湿度が保たれるため、乾燥を感じにくくなる傾向がありますが、感染対策のひとつとして、例年以上に意識的な水分補給を心がけましょう。