ビタミン総合
- ※1酸性:0<pH<7
- ※2中性:pH=7
- ※3アルカリ性:7<pH<14
錠剤でも液剤でも、同じ成分で同じ量含まれていれば、その効果は基本的には同じです。
一般的に、液剤は速く吸収されて速く代謝されるという特徴があり、錠剤はゆっくり吸収されて長くとどまるという特徴があります。簡単に言えば、液剤は即効性、錠剤は持続性ともいえるでしょう。
基本である食事のバランスを良くすることに加えて、こういった錠剤や液剤も賢く利用しましょう。日常的に錠剤を摂取し、リフレッシュもかねて液剤を利用するのも一つの方法です。また、どういう形で摂取しても、許容上限摂取量の範囲を超えないように注意しましょう。
(参考:糸川嘉則著「最新ビタミン学」フットワーク出版 他)
ビタミンの吸収率に及ぼす因子はいくつかあり、一概に何%が吸収されるとの統一見解はありません。ビタミンの吸収率に及ぼす因子には、以下があります。
- 1摂取するビタミン量:ビタミンの吸収率は、摂取ビタミン量が少ないほど吸収率が高くなる傾向にあります。
- 2ビタミンと同時に摂取する食事の有無:脂溶性ビタミンは、他の脂質と同時に摂取した方が単独で摂取するよりも吸収率が高くなります。
- 3体内のビタミン状態:摂取する人の体内のビタミン量が低ければ吸収率は高くなる傾向にありますし、一方で加齢に伴い栄養素の吸収率は全般的に低下します。
(参考:ビタミンハンドブック)
日本では、もともと錠剤やカプセルの形をしたビタミンは医薬品として取り扱われていましたが、1990年代に規制緩和により、食品としての取り扱いができるようになりました。
- 成分について
- 医薬品の方が効果の高い成分が含まれているのではないか、と考える人が多いようですが、医薬品と食品では成分が同じ場合も多々あります。
ビタミンには天然から抽出された製品(以下天然物)、天然に存在する化合物と同じ成分を化学合成した製品(以下合成品)、天然に存在する化合物に側鎖などがついた誘導体があります。
天然物と化学合成品は、構造が同じなので、ほとんどの場合生理活性は同じです。(※ビタミンEは例外。下記参照)。誘導体は、吸収を良くしたり、安全性をより高くするなどの目的で医薬品として開発された製品です。食品由来のビタミンと比べて、使用経験が浅く、副作用についての情報が限られている事もあり医薬品としてのみ添加が許可されています。誘導体を使用した製品では、ラベルに○○誘導体と記載されている場合が多いです。誘導体は医薬品としてのみの取り扱いになりますが、一般に、天然物の化学合成品は、一部のビタミンを除き、医薬品としても食品としても取り扱うことができます。つまり、天然物と化学合成品の場合は、医薬品と食品で成分の違いはないということになります。
- 含量について
- 医薬品の方が含量が多いと考えられがちですが、ビタミンB1、B2、B12、Cは、食品として販売する場合でも特に含量の上限値は決められていませんので、食品でも医薬品と同等の量が含まれている場合があります。但し、医薬品は病気の時に有効性を期待して服薬量を設定しますので、1日の服薬量が日本人の食事摂取基準(2015年版)の食品としてそれ以上摂らない方がよい量(耐用上限量)を上回る場合もあります。
- 法規制について
- 医薬品のビタミンは、薬機法で定められた成分含有量などの基準をクリアしたもので、効果効能をうたうことができます。処方箋が必要な医療用医薬品と、薬局で販売可能なOTC薬が一般用医薬品3種類と要指導医薬品1種類の合計4種類に分類されます。一方、食品として取り扱えるビタミンは、食品衛生法で食品添加物として認められているものに限られており、効果効能・1日の服用量等はうたうことができません。
- ※ビタミンEの研究により天然と合成では生体内の利用率が約2倍違いますので、ビタミンEについては天然のd-α-トコフェロール(合成はdl-トコフェロールと表示されています)の方が、生体内での利用率が高くなります。
脂質代謝に関連のある主なビタミンとしてはビタミンB2、ナイアシン、パントテン酸が挙げられます。これらのビタミンは脂質代謝に必要な酵素の補酵素となりますので、不足すると代謝が阻害される可能性があります。特にビタミンB2が足りないと、脂肪酸の代謝が進まずエネルギーとして利用できなくなります。脂肪酸の代謝には、数種類のビタミンが関わっていますが、中でもビタミンB2だけが「脂質代謝のビタミン」と呼ばれるのはそのためです。また、糖質の分解には上記に加え、ビタミンB1も関与してきます。
脂質代謝を盛んにしたい方は、運動や食事に加えて、ビタミンB群を補給することも大切です。
ビタミン類は全身のさまざまな代謝に関与するので、不足した場合は欠乏症として現れますが、多くの場合は皮膚や粘膜の変化として現れます。皮膚や粘膜とビタミンとの関連として、次のような例があります。
- ビタミンA
- ビタミンAが不足すると乾燥しやすくなります。その理由は、汗腺や皮膚の機能が低下して皮脂量が減少したり、角化が不完全になり角質の保湿機能が低下するためと考えられています。また、皮膚の細菌感染を起しやすくなり、結果的に皮膚や粘膜の状態を悪化させることもあります。
- ビタミンB2
- ビタミンB2は体全体、血管、特に皮膚の毛細血管を丈夫にして血液循環をよくします。不足すると口唇炎や口角炎が起こることがよく知られています。ビタミンB2不足では毛細血管が拡張し、日光の透過性が高くなることから、外部からの刺激を受けやすくなっており、日光に対しても過敏になります。
- ビタミンB6
- ビタミンB6が不足すると皮膚症状として、湿疹、脂漏性皮膚炎、口角炎、舌炎等の臨床症状が現れることから、皮膚に必要なビタミンと考えられています。
しかしながら、これらの臨床症状が生ずるメカニズムについては、いまだ多くが不明です。
- ナイアシン
- ナイアシンが不足すると「ペラグラ」と呼ばれる皮膚炎が起こります。ペラグラの発症メカニズムには不明な点が多く残されていますが、皮膚が日光に対し過敏に反応することによると考えられています。
- ビタミンC
- ビタミンCは、体のタンパク質の約1/3を占めるコラーゲンの生成に必要です。
コラーゲンは結合組織の主成分として細胞と細胞をつなぎ合わせ、皮膚を含め組織や臓器を形作ります。従ってその不足は「壊血病」として皮膚や粘膜からの出血として現れます。
栄養機能食品の場合、「皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素です」という表示が認められている栄養素には、ビタミンA、βカロテン、ビタミンB1、B2、B6、ビタミンC、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、亜鉛があります。
(参考:「ビタミンの辞典」日本ビタミン学会編ほか)
ビタミン・ミネラルはどのライフステージにも必要不可欠なものですが、日本人の食事摂取基準(2020年版)によると、妊婦では、ビタミンA、ビタミンD、葉酸、鉄などが妊娠していない女性と比べて、摂取量を増やすことを推奨されているビタミンです。
ビタミンDは骨形成に必要な為、妊婦、授乳婦では摂取目安量が多く設定されています。葉酸は細胞分裂やDNA合成に必要な栄養素であり、特に妊娠4週間前から妊娠12週まで毎日葉酸を付加的に400μg摂取すると神経管閉鎖障害の発生率を下げることが知られています。
一方、妊婦が摂ってはいけないビタミンはありませんが、摂取量が多すぎると問題になるビタミンがあります。妊婦特有の毒性が報告されているのはビタミンAで、10,000IU(3,000μgRE)を毎日長期間摂取した場合に胎児奇形がみられる恐れがあるとの報告があります。
CRN(米国栄養評議会)は、10,000IU(3,000μgRE)以下では副作用が出ない、と発表していますが、日本では安全性を高く見積もり、ほとんどすべての人において健康上悪影響を及ぼす危険のない量として9,000IU(2,700μgRE)と定めています。成長に欠かせない大切なビタミンなので、ビタミンAの一部は過剰摂取の心配がないβカロテンとして摂取すると良いでしょう。
最後に、妊娠中は味覚が変化したり、つわりによる食事摂取量低下などから、栄養状態が悪化する場合があります。3度の食事をバランスよく摂ることが最も大切ですが、不足しがちな栄養素を補う目的で上手にサプリメントを活用することも1つの方法です。
ヒトは必要とする栄養素のすべてを体内で作ることはできません。従って毎日水分や栄養分などを補給しています。サプリメントは食品成分のみを補給している点、錠剤やカプセルである点、味覚的満足感が得られない点など違いはありますが、栄養素を補給しているという意味では同じです。
基本的には、農林水産省が提唱している「食生活は、主食・主菜・副菜を基本」とあるように、食事のバランスを整えるようにしましょう。しかし、例えば減量中に通常の食物のみで全てのビタミンを不足なく摂取することや、喫煙者でビタミンCが不足しがちになるため特別にビタミンCを多めに摂りたい時など、特定の栄養素のみを食物から摂取することは極めて難しく、こういった場合にサプリメントとしてビタミンを摂取することは有益と考えられます。
食べ物に含まれるビタミンもサプリメントとして摂取するビタミンも基本的には生体内で同じように吸収・代謝を受けますので、サプリメントを摂取する事で食物由来のビタミンの利用が変化する事はないと考えられます。
摂取頻度については、常に生体内のビタミンの飽和状態を保ち、運動やストレスなどによるビタミンの大量消費に備えるためにも、疲労時だけでなく、日常的に食物やサプリメントから積極的なビタミン摂取をお勧めします。
ご参考までに、過剰に摂取すると何らかの影響が出るリスクのあるビタミンやミネラル等については、日本人の食事摂取基準で耐容上限量が決められています。これは毎日摂り続けても安全な量として策定されました。一般には各製品のラベルに記載している1日の摂取目安量の範囲内であれば心配はないでしょう。
(お茶の水女子大学名誉教授 五十嵐 脩先生の回答)
相乗・相加効果に類するものについては、その代表的な例を3つ紹介させていただきます。
まず、ビタミンB群のビタミンB1、B2、ナイアシン、パントテン酸、ビオチンは、炭水化物の代謝の各ステップに関わっています。従って、どれかひとつでも足りないと、炭水化物の代謝がうまくできなくなります。
ビタミンB群の中でも、葉酸、ビタミンB6、B12はいずれもホモシステインの代謝に関わっていることが知られています。ホモシステイン濃度が高いと、脳梗塞や心筋梗塞の発症の危険性が高くなると言われています。血液中のホモシステイン濃度が高い患者さんに葉酸、ビタミンB6、B12を単独または併用して投与したところ、単独で投与した場合より、併用した方が、ホモシステイン濃度がより低下したという報告があります。βカロテン、ビタミンC、ビタミンEは、いずれも抗酸化物質として働き、さまざまな臨床試験で併用されています。このうち、ビタミンCは、抗酸化作用を発揮した後に不活性化したビタミンEをもう一度活性化させる作用のあることが知られています。
参考:「よくわかるビタミンブック」 吉川敏一著 主婦の友社
「ビタミン」 五十嵐脩著 丸善ライブラリー 他
- ※医薬品を服用中の場合には、主治医にご相談ください。
薬剤によるビタミン欠乏は数多く報告されていますので、薬局でよく扱われている薬剤に着目し、いくつかの気をつけなければいけない事例をご紹介します。詳しくは医師・薬剤師等専門家にお尋ねください。
なお、OTC薬の中では胃痛、胸やけの薬であるH2受容体拮抗薬においてビタミンB12、葉酸、鉄の欠乏が報告されています。これらの欠乏症状としては貧血などがあげられます。
Avmard J P et al; Haematological adverse effects of histamine H-2 receptor antagonists.; Med Toxicol&Adverse Drug 3(6), 430-, 1988
糸川嘉則;ビタミンと葉酸との干渉; Prog Med 5, 623-, 1985
処方薬の例としては次のようなものがあげられます。
- 1抗生物質によるビタミンB2欠乏
ペニシリン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、ストレプトマイシンなどの投与により、咽頭炎、舌炎、口角炎などのビタミンB2欠乏症状が発生するという報告が数多くあります。これらの薬剤の添付文書の副作用の項目にもその旨の記載があります。
糸川嘉則;ビタミンと葉酸との干渉; Prog Med 5, 623-, 1985 - 2てんかんの薬による葉酸欠乏
てんかんの薬であるフェニトインなどを長期に服用すると、血清中の葉酸濃度が低下し、多発神経炎が発症することが知られています。実際、フェニトイン長期服用患者には葉酸がしばしば投与されているようです。
小尾智一;フェニトイン長期服用者に多発する葉酸欠乏と多発神経炎について;臨神経 28(12), 1530, 1988
糸川嘉則;ビタミンと葉酸との干渉; Prog Med 5, 623-, 1985
喫煙の害は、喫煙者本人だけでなく、喫煙しないまわりの人にも及びます。タバコの煙、特に副流煙には発癌物質、その他の有害物質が数多く含まれているからです。
喫煙者では、非喫煙者に比べて、吸い込んだこれらの有害物質を解毒する為に、ビタミンCの代謝が速くなっていて、生体内のビタミンC総量を減らすことがわかっています。また、小腸でのビタミンCの吸収も低下するともいわれています。
したがって、喫煙の害から身体を守る為には、適量のビタミンC、ビタミンE、βカロテンなどの抗酸化ビタミンを摂ることが薦められています。
(参考:新ビタミンCと健康、ビタミンミネラルBOOK)