食物繊維を摂ろう!

食物繊維の朝摂取による3つの効果

食物繊維を含む菊芋(※)を朝食時に摂取した場合と夕食時に摂取した場合での便秘・血糖・腸内細菌への影響の研究がされています。(文献1)

昨今の研究によって食物繊維を朝摂取することによる3つの効果が確認されました。

  1. ※1この研究で使用の菊芋についてはイヌリンを50%程度含む。
    研究では菊芋を乾燥させ、粉末状にした菊芋パウダーを使用。

1.便秘への効果

65歳以上の高齢者約30名を7日間にわたり、①朝食に菊芋パウダー(※1)5gを水に溶かして摂取したグループ、②夕食に菊芋パウダー5gを水に溶かして摂取したグループに分けて、便秘尺度という指標を用いて、菊芋摂取が便通にどのような作用したのかを調べました。

便秘と診断された参加者7名(※2)のみを調べた結果、①のグループの便秘が改善された傾向が確認されました。これは、夕方からの睡眠期より、朝からの活動期の方が、腸内細菌は効果的に食物繊維を利用し、その結果、産生された短鎖脂肪酸類が、腸のぜん動運動を促進した可能性が考えられます。(図1)

図1 菊芋の朝摂取と夕摂取による便秘スコアの比較

図1 菊芋の朝摂取と夕摂取による便秘スコアの比較
Kim et al., Nutrients, 2020
  1. ※2便秘と診断された参加者7名:①朝摂取群4人、②夕摂取群3人
  2. ※3便秘評価尺度(日本語版CAS):①お腹が張った感じ、ふくれた感じ、②排ガス量、③便の回数、④直腸に内容が充満している感じ、⑤排便時の肛門の痛み、⑥便の量、⑦便の排泄状態、⑧下痢または水様便 などの8項目について、各々の3段階にて評価を行う方法

2.血糖値上昇抑制作用とセカンドミール効果

65歳以上の高齢者約30名を①朝食に菊芋パウダー(※1)5gを水に溶かして摂取したグループ、②夕食に菊芋パウダー5gを水に溶かして摂取したグループに分けて、15分ごとに24時間の血糖測定が可能な装置を腕につけて血糖値の変動を調べました。試験は2週間かけて行い、1週目はベースラインとして日常生活を維持し、2週目に菊芋パウダーを摂取してもらいました。

菊芋に含まれるイヌリンはでんぷんの分解を緩やかにし、朝・夕のタイミングに関わらず、摂取時の食事性の高血糖を防ぐことが知られています。(図2)

図2 菊芋の摂取タイミングによる各食事の血糖値変化

図2 菊芋の摂取タイミングによる各食事の血糖値変化
Kim et al., Nutrients, 2020

さらに今回の実験では、朝食時(ファーストミール)の菊芋摂取によって、その5~12時間後に菊芋を食していなくとも、昼食(セカンドミール)や夕食の血糖値を低めにすることが分かりました。これは「セカンドミール効果」と言われます。

一方、夕食時に菊芋を摂取しても、セカンドミール効果は出にくい結果となりました。1日全体の血糖値コントロールを考えると、夕食時よりも朝食の摂取がおすすめです。

また、肥満と腸内環境は関連性が深く、太りやすい・太りにくいというのが腸内環境のバランスで変わります。

肥満の人の腸内細菌はファーミキューテス(Firmicutes)門に属する菌が多く、バクテロイデーテス(Bacteroidetes)門に属する菌が少ないといわれています。

そこで菊芋摂取による血糖値抑制作用と、肥満や糖尿病との関連が注目されている腸内細菌に対する作用の関連性を調べました。

バクテロイデーテス門とファーミキューテス門(※3)の菊芋摂取前後での割合と、菊芋摂取時の血糖変化の関連性を調べた結果、バクテロイデーテス門の割合が大きいことと血糖値の抑制に関連が見られ、逆にファーミキューテス門の割合が大きいことと、血糖値の抑制が起こりにくいことに関連があることがわかりました。

すなわち、菊芋の摂取によって食事性高血糖を抑制できた人は、消化されなかった食物繊維が腸内細菌のエサになり、バクテロイデーテス門が増えファーミキューテス門が減る方向に働きかけている可能性が示唆されます。実験では、朝夕群に統計的な差はなかったものの、被験者数を増やした場合、朝に摂取の方が良い結果が得られる可能性も考えられます。

  1. ※3ヒトの腸内に存在する細菌群の主な4分類のうちの2つです。肥満や2型糖尿病患者ではバクテロイデーテス門の低下が見られ、ファーミキューテス門の増加が見られるという報告もあります。

3.体内時計リセット効果

体内時計が朝にしっかりとリセットされる朝型の人は、夜型の人と比較して、朝の食物繊維の摂取量が多いことが研究調査で分かっています(文献2)。つまり、朝の食物繊維の摂取が体内時計をリセットさせ、朝型の維持に貢献していると考えられます。

毎日を元気に過ごすために欠かせない食物繊維。水溶性の食物繊維は、朝に摂ると効果が高まることが認められていますが、しっかり毎食摂ることが健康で豊かな生活につながります。

引用文献

(1)Ingestion of Helianthus tuberosus at Breakfast Rather Than at Dinner Is More Effective for Suppressing Glucose Levels and Improving the Intestinal Microbiota in Older Adults.
Kim HK, Chijiki H, Nanba T, Ozaki M, Sasaki H, Takahashi M, Shibata S.Nutrients. 2020 Oct 3;12(10):3035. doi: 10.3390/nu12103035.

(2)成人女性のクロノタイプ別栄養摂取の傾向 新田理恵ら、第28回日本時間生物学会学術大会、2021年11月