職場で起こる熱中症 対策と対処法
職場で熱中症を防止するためにどのようなことに気をつければよいのでしょうか。厚生労働省では近年の発症数の増加を踏まえて、具体的な対策を打ち出しています。
- 環境
- 環境気温
- 湿度の高さ、直射日光
- 風の有無、急激な暑さ
- からだ
- 体力、体格の個人差
- 健康状態
- 体調、疲労の状態
- 暑さへの慣れ
- 行動
- 計画的な熱への順応
- 定期的な水分・塩分の摂取
- 健康診断
- 教育
- 衣服の状況など
環境の管理
暑さ指数(WBGT)の低減
気温、湿度、輻射(放射)熱、気流を加味したのが暑さ指数(WBGT値)です。WBGT値が高くなると熱中症の発生率も上がります。作業中にWBGT値を測定し、身体作業強度に応じたWBGT値の基準値と照らし合わせます。この基準値を超えると熱中症になる可能性が高いので、 WBGT値低減のための対策をとることが必要になってきます。
WBGT値低減対策
- 熱遮へい板、通風の確保、冷房などで作業場所のWBGT値の低減を図る
- 身体作業強度の低い作業に変更する
- 作業場所を変える など
休憩場所の整備など
作業場所が高温多湿である時は、作業場の近くに冷房を備えた涼しい休憩所を設けましょう。休憩所にはクーラーボックスと氷、冷やした飲料(0.1~0.2%の食塩水やイオン飲料、経口補水液など)の入ったポット、梅干しなどを置いて定期的に水分・塩分(ナトリウム)補給ができるようにします。冷たいおしぼり、シャワーなど、身体を適度に冷やせる設備もあるとよいでしょう。
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身体作業強度等に応じたWBGT基準値
身体作業強度等に応じたWBGT基準値
身体作業強度等に応じたWBGT基準値
出典:厚生労働省「職場における熱中症予防基本対策要綱の策定について」
作業管理
休憩時間と連続作業時間の短縮
定期的に休憩時間を設け、高温多湿の作業場での連続作業時間を短くします。また天候や個人の健康状況に応じて身体作業強度を調節しましょう。
暑熱順化(熱への順化)
暑いところで身体活動強度の高い仕事を突然始めると、身体が暑さに慣れていないため熱中症が起こりやすいことがわかっています。強度が高い作業にとりかかる際は、暑熱順化期間(暑さに慣れるための期間)が必要です。具体的には7日間以上かけて、暑さへの暴露時間を次第に長くしていきます。
水分・塩分(ナトリウム)の摂取
定期的な水分及び塩分の摂取については、作業強度等に応じて必要な摂取量等は異なりますが、WBGT 基準値を超える場合には、少なくとも、0.1~0.2%の食塩水又はナトリウム40~80mg/100mlのスポーツドリンク又は経口補水液等を、20~30 分ごとにカップ1~2 杯程度は摂取することが望ましいところです。
出典:厚生労働省「職場における熱中症予防対策マニュアル」(2021 改訂)
暑熱環境下や作業服等の着用で汗の蒸発による体温調節ができない状況では、カラダに熱がこもりやすくなります。水分・塩分補給に加えて、活動前に体の内部の温度(深部体温)をあらかじめ下げておくことが大切です。近年では、深部体温に着目し、カラダの内側から冷却する方法としてアイススラリー※が用いられることがあります。深部体温を速やかに低下させることにより熱中症リスクの軽減が期待できます。
- ※アイススラリーとは、液体と微細な氷が混ざりあった飲料です。アイススラリーは低温で流動性が高く、氷が水に溶ける際に体内の熱を多く吸収することができます。そのため、アイススラリーの摂取は水よりも冷却効果が高く、有用な暑熱対策の一つと考えられています。
服装など
透湿性、通気性の良い服装を心がけましょう。直射日光下では、日射しを避けるものや、帽子、クールヘルメットなどの着用が望ましいでしょう。色調は輻射熱を反射しやすい明るい色が良く、保冷剤の活用が有効です。
暑さ指数(WBGT)が高い暑熱環境の下で、作業強度を下げたり通気性の良い衣服を採用したりすることが困難な作業においては、作業開始前にあらかじめ深部体温を下げ、作業中の体温上昇を抑えるプレクーリングも行われており、体表面を冷却する方法と、冷水やアイススラリー(流動性の氷状飲料)などを摂取して体内から冷却する方法とがある。必要に応じ作業開始前や休憩時間中のプレクーリングを検討すること。
出典:令和5年「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」実施要綱より
健康管理
健康診断結果に基づく対応
健康診断で異常が認められた時は、医師などの意見を聞き、管理者は作業者の作業場所や内容の変更や軽減の措置をとらなければならないことが労働安全衛生法で定められています。熱中症発生に影響ある疾患(糖尿病、高血圧症、心疾患、腎不全、精神神経系の疾患、広範囲の皮膚疾患など)を持つ方へは、医師などの意見を参考に作業場所を変更したり、作業を転換する必要があります。
日常の健康管理など
睡眠不足、二日酔い、朝食を摂らなかった、風邪による発熱、下痢などからくる脱水など、体調不良が熱中症に悪影響を与えることがあります。このような時は正直に申告し、熱中症の防止に努めましょう。また管理者は作業者の健康状態と水分摂取の状況を、作業開始前や作業中の巡回時に確認しましょう。熱中症は突然発生することもあるので、普段との体調の違いに気付くためにも、お互いに声をかけあうことも有効です。
身体の状況の確認
休憩所には体温計や体重計などを備え、必要に応じて体調の確認ができるようにします。また下記に該当する場合は熱中症の兆候なので、すぐに身体を休め冷やすことが必要です。
- 心拍数が(180-年齢)/分 を超えて数分間継続する場合
- 休憩中の体温が作業開始前に戻らない場合
- 作業開始よりも体重が1.5%を超えて減少した場合
- 急に激しい疲労感、悪心、めまい、意識喪失などがあらわれた場合
労働の直後など発汗が多い時や衣服が濡れている時は正確に体温が測れない場合があります。その時は口腔で体温を測るなど工夫が必要です。体温のみを過信せず体調など他の要因を加味して判断してください。
労働衛生教育
労働者を高温多湿作業場所において作業に従事させる場合には、適切な作業管理、労働者自身による健康管理等が重要であることから、作業を管理する者及び労働者に対して、あらかじめ次の事項について労働衛生教育を行いましょう。
- 1熱中症の症状
- 2熱中症の予防方法
- 3緊急時の救急処置
- 4熱中症の事例
救急処置
緊急連絡網の作成および周知
労働者を高温多湿作業場所において作業に従事させる場合には、労働者の熱中症の発症に備え、あらかじめ、病院、診療所等の所在地及び連絡先を把握するとともに、緊急連絡網を作成し、関係者に周知しておきましょう。
救急措置
熱中症を疑わせる症状が現われた場合は、救急処置として涼しい場所で身体を 冷し、水分及び塩分の摂取等を行うこと。また、必要に応じ、救急隊を要請し、 又は医師の診察を受けさせること。
出典:厚生労働省「職場における熱中症予防基本対策要綱の策定について
- スポーツ時の熱中症 対策と対処法
- 職場で起こる熱中症 対策と対処法
- 室内で起こる熱中症 対策と対処法