熱中症からカラダを守ろう

熱中症対策に適した飲料とは

糖電解質飲料に含まれる糖の種類も考慮する必要があります

熱中症を防ぐ対策の一つとして塩分(ナトリウム)と糖を含んだ飲料で水分を補給し、減少した血漿量※1を速やかに回復し維持させることが重要ですが、研究で飲料に含まれる糖の種類によって血漿量の回復に違いがあることがわかりました。

  1. ※1血漿量:血液のうち血球成分(赤血球、白血球、血小板)などを除いた液体成分

研究概要

汗をたくさんかいた時に、糖質組成が異なる2種類の飲料または水(ミネラルウォーター)を摂取した後の血漿量の回復の違いを比較しました。

対象

運動習慣のある健常成人18名(男性)
平均年齢:22歳
平均体重:66.8kg

デザイン

(一人の被験者が、いくつかの条件をランダムに繰り返し、結果を比較する方法)
この試験では、飲料A、飲料B、または水を飲む3回の施行を異なる順番で行いました。

方法

室温36℃、湿度40%の室内で、発汗により体重の2%に相当する水分を失うまで自転車こぎ運動(最大酸素摂取量の70%の強度)を行いました。その後、失った水分と同じ量の飲料(飲料A、飲料B、または水)を飲みました。

用いた飲料

飲料A ぶどう糖と果糖を含む糖電解質飲料
栄養成分表示(100mLあたり):炭水化物 6.2g、ナトリウム 49mg
原材料のうち糖質源となるもの:砂糖※2、果糖ぶどう糖、果汁
飲料B 果糖主体の糖電解質飲料
栄養成分表示(100mLあたり):炭水化物 4.7g、ナトリウム34mg
原材料のうち糖質源となるもの:高果糖液糖、はちみつ
対照飲料 水(ミネラルウォーター)
  1. ※2砂糖:ぶどう糖と果糖が1分子ずつ結合したもので、摂取した後はぶどう糖と果糖に分かれて吸収される

結果

飲料を飲むと血漿量は回復しますが、回復の様子は飲料によって異なります。ぶどう糖と果糖を含む飲料Aは、水よりも速く、しかも高いレベルまで血漿量が回復しました。一方、果糖が主体の飲料Bでは、飲み始めても血漿量は1時間ほど上昇が認められず、飲料Aや水のどちらよりも回復が遅いという結果でした。

発汗による脱水で低下した血漿量の増加率
出典:田畑泉、体育の科学、62(7)、p538、2012(一部改変)

考察

ぶどう糖と果糖を含む飲料Aでは、水よりも速く、しかも高いレベルまで血漿量が回復しました。これは、飲料中のナトリウムに加えて、ぶどう糖と果糖の両方が腸管での水分の吸収を加速させたためと考えられます。さらに飲料中のナトリウムは、血漿量を高く維持することにも働いたと考えられます。

一方、果糖が主体の飲料Bでは、飲料Aだけでなく水と比べても、血漿量の回復が遅れました。これは、腸管での果糖の吸収が良くないことに起因し、果糖の吸収が遅れたことで水分が腸管の内側から血液側に移動(吸収)できなかったためと考えられます。

この結果から、適切な水分補給のためには電解質(イオン)の量や組成だけでなく糖電解質飲料に含まれる糖の種類も考慮する必要性が示されました。