知っていますか?「感染症の迅速検査」

アデノウイルス

アデノウイルスとは

アデノウイルスは一般的なかぜの原因ウイルスの一つで、たくさんの型(種類)があり、型によって呼吸器症状、胃腸症状、眼の症状、さらに出血性膀胱炎、尿道炎、肝炎など様々な症状が報告されていて、ときには重症化することもあります。

感染経路

飛沫感染と接触感染に注意します。感染している人のくしゃみや、せきで出る飛沫を吸い込むことにより感染します。くしゃみやせきを浴びる距離(2メートル程度)にいる人は感染の危険性が高まります。また、感染している人の唾(つば)や鼻水が手から手へ、あるいはドアノブやつり革、ハンカチ、おもちゃなどを介して手に付着し、口や鼻、目などの粘膜を触れることでも感染します。こまめな手洗いが有効となりますが、通常の手指消毒用アルコールの効果が低いため、 消毒剤の選択が重要となります。

潜伏期・感染可能期間

感染してから発症するまでの潜伏期間は、5~7日です。咽頭結膜熱は学校保健安全法上の学校感染症の一つであり、主要症状がなくなった後、2日間登校禁止となっています。

  • 感染するアデノウイルスの種類によっても潜伏期間は異なります。

症状

咽頭結膜熱(プール熱)

潜伏期間は5~7日で、症状が出る2日前から他の人へうつります。1日の間に40℃と37℃の間を上がったり下がったりする弛張熱が4~5日続き、扁桃腺が腫れ、のどの痛みが出現します。口呼吸、鼻閉、イビキ、頭痛、腹痛、下痢、耳の前や首のリンパ腺が腫れることがあります。両目または片目が真っ赤に充血し、目やにが出ることもあります。かつては夏にプールで流行することがあったため、俗称としてプール熱とも呼ばれていました。現在は塩素濃度管理の徹底等によりプール水での感染は稀と考えられますが、使用するタオルを介しての感染には注意が必要です。

流行性角結膜炎(はやり目)

アデノウイルスのついた指や手で目をこすることによっておこります。潜伏期間は一週間またはそれ以上で、眼科の病気としては発病まで長い時間がかかります。白目(結膜)が真っ赤になり、目やにや涙が多く出てまぶたが腫れます。放置しておくと黒目(角膜)にまで炎症が進行し、目の異物感や痛みが出てきます。早めに受診しましょう。

出血性膀胱炎

排尿時の痛みと肉眼的血尿が特徴で、これらの膀胱炎症状は2~3日で良くなり、尿検査での潜血も10日程度で改善します。

胃腸炎

乳幼児期に多く、腹痛、嘔吐、下痢を伴いますが、発熱の程度は軽いといわれています。

検査方法

アデノウイルスの診断には、主に抗原定性検査が用いられます。検体を採取する場所は、症状に応じて、のどの奥、眼の結膜、ふん便などを用います。結果が出るまでの時間はだいたい5分から10分くらいです。ウイルスの種類を判別する時には、PCR検査などが用いられます。

治療方法

アデノウイルスに対する抗ウイルス薬はありませんので対症療法になります。またワクチンも、現在一般に使われているものはありません。特効薬やワクチンの研究は進められていますが、まだ広く実用化されるという段階には至っていません。
高熱が続き食欲が無い時は、脱水状態を防ぐために水分の補給が大切です。必要に応じて、抗菌薬やステロイドが用いられることがあります。

Q&A

Q
プール熱やはやり目はいつから学校に行けるのでしょうか?
A

咽頭結膜熱(プール熱)は学校保健安全法上の学校感染症の一つであり、主要症状がなくなった後、2日間出席停止となっています。流行性角結膜炎(はやり目)は、学校保健安全法上の第3種となっており、伝染の恐れがないと、医師が認めるまでは出席停止となっています。

Q
プール熱やはやり目にならないために注意することがありますか?
A

接触感染と飛沫感染に特に注意します。
アデノウイルスは感染力が強く、手指消毒用アルコールの効果も低いことが知られています。プールに入らなくても飛沫や糞便を通してこの病気に感染します。ですから、予防法としては、うがい、石鹸による手洗い、タオルの共用を避ける、水泳前後のシャワーの励行、プールの塩素消毒などがあります。

Q
アデノウイルス感染症には、どうして何回も感染するのでしょうか?
A

アデノウイルスは、AからGの亜型に分類され、血清型では50種以上に分けられています。このようにアデノウイルスは亜型が多く、血清型も多様な上、このウイルスには免疫がつきにくいことも知られています。
一つの型のアデノウイルスに罹患しても、まだ感染したことの無いアデノウイルスには無防備です。このため、アデノウイルス感染症には何回も感染するのです。

Q
夏だけ(プールの時期だけ)流行するのでしょうか?
A

夏場(プールの時期)に流行し、患者数も増える傾向にありますが、年間を通じて感染する可能性はありますので、通年での予防が必要になります。