知っていますか?「感染症の迅速検査」

RSウイルス

RS(Respiratory syncytial )ウイルスとは

RSウイルスは一般的なかぜの原因ウイルスの一つで、赤ちゃんから高齢者まで生涯にわたって何度も感染と発病を繰り返します。特に乳幼児に多く、1歳までに半数以上が感染し、3歳までにほぼすべての小児が感染するといわれています。特に6か月未満の子どもでは肺炎や細気管支炎などの重篤な症状を引き起こすこともあり注意が必要です。

感染経路

飛沫感染と接触感染に注意します。感染している人のくしゃみやせきで出る飛沫を吸い込むことにより感染します。くしゃみやせきを浴びる距離(2メートル程度)にいる人は感染の危険性が高まります。また、感染している人の唾(つば)や鼻水が手から手へ、あるいはドアノブやつり革などを介して手に付着し、口や鼻、目などの粘膜を触れることでも感染します。こまめな手洗い、手指消毒用アルコールで接触感染のリスクを減らすことができます。なお、RSウイルスは感染力が強く、保育園、幼稚園、病院の外来や病棟、高齢者施設での流行がみられ、注意が必要となります。

潜伏期・感染可能期間

通常RSウイルスに感染してから2~8日、典型的には4~6日間の潜伏期間を経て発熱、鼻汁などの症状が数日続きます。

症状

鼻水、発熱、せきなど一般的なかぜの症状からはじまりますが、RSウイルスが下気道に入り込むと、細気管支炎、肺炎にいたることもあります。喘息のようなゼイゼイとしたせきが特徴ですが、初めて感染した乳幼児は重症化しやすく、症状によっては入院が必要なこともあります。呼吸が苦しそう、陥没呼吸(息をするときに、胸やおなかがぺこぺことへこむ)がみられる、顔色が悪い、母乳やミルクの飲みが悪いなどがみられるときは早めに医療機関を受診しましょう。
また、6か月未満の赤ちゃんや早産児、生まれつき肺や心臓に疾患を持っている場合に重症化することがあります。RSウイルスに感染し、入院を必要とする場合のほとんどは、初めて感染する6か月未満の乳児といわれています。

検査方法

RSウイルスの診断には、主に抗原定性検査が用いられます。検体を採取する場所は、鼻の奥が一般的ですが、鼻の手前、鼻腔吸引液などを用いることもあります。結果が出るまでの時間はだいたい5分から10分くらいです。(この検査は外来受診の場合、1歳未満の子どもが保険診療の対象となります。入院の場合や、予防薬の適用となる患児でも保険適応となります)

治療方法

RSウイルスに対する抗ウイルス薬はありませんので対症療法になります。安静にしてゆっくり休み、部屋の湿度を保ち、水分補給を心がけましょう。水が飲めない、呼吸困難等がある場合は、入院して輸液の投与、酸素吸入等を行うことがあります。症状が重篤化する可能性が高い、低出生体重児、呼吸器、循環器等に基礎疾患があるお子さんが適応となる予防薬もあります。

Q&A

Q
RSウイルスは大人にも感染するのですか?
A

RSウイルスは、年齢にかかわらず感染します。一度感染しても免疫ができにくいため何度も感染しますが、何度も感染するうちに症状も軽くなり、大人ではせき、鼻水、微熱などの一般的なかぜの症状で済むことが多いとされています。ただし高齢者では慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息や慢性心不全の悪化、また肺炎の合併も報告されています。

Q
どのような方が重症化しやすいのでしょうか?
A

乳幼児期、1歳以下でRSウイルスに初感染した場合は、症状が重くなりやすいといわれ、細気管支炎、肺炎といった重篤な合併症を引き起こすことがあります。特に低出生体重児、心疾患、肺疾患、免疫不全のある方は重症化のリスクが高いといわれています。再感染は起こりますが、一般的には年長児以降では重症化することはまれです。

Q
細気管支炎とは?
A

肺の中の気管支が枝分かれし、細くなっている部分を細気管支といいます。この細気管支の壁が炎症を起こし厚くなることで、肺への空気の通りが悪くなり、ヒューヒュー、ゼイゼイという喘鳴が聞かれます。乳幼児の細気管支炎の多くはRSウイルスによります。

Q
RSウイルス感染症の予防法は?
A

現在は、有効とされるワクチンはありませんので、手洗い、マスクなど、飛沫感染と接触感染に注意します。
また、すべてのお子さんが対象となるわけではありませんが、症状が重篤化する可能性が高い、早産児・心臓・呼吸器・ダウン症等の基礎疾患があるお子さんが適応となる予防薬もあります。